彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)




「お墓参りに来たのに、お供え物を投げるということがおかしい!ちゃんと拾って供えてください!!」

「・・・・・・・は?」





瑞希お兄ちゃんに投げつけ、地面に転がっている未開封の缶を指さしながら告げた。




(本来ならば、投げ返してやりたいけど・・・・)





“陽翔の・・・・・・・・陽翔の墓の前で修羅場はしたくねぇ・・・・!”





(と、言った瑞希お兄ちゃんの気持ちを尊重(そんちょう)して、私も大人の対応をしよう。)



〔★今までの行動は、大人の対応とは言えない★〕




自分の気持ちを抑えて、大人に説教する。






「故人(こじん)に挨拶する気がないなら、それ拾ってさっさと帰れ!!」


「なっ・・・!!?」









私の言葉に、おじさんは目を丸くする。

そのまま、固まって動かなくなる。



「凛・・・・」

「凛たん・・・」

「凛ちゃん・・・」

「凛道・・・」

「凛助~・・・!」



瑞希お兄ちゃんも、烈司さんも、モニカちゃんも、獅子島さんも、百鬼もーーーーなぜか動きを止めてしまった。

静かな墓地が、ますます静かで重い空気となった。




(これでもまだ、瑞希お兄ちゃんを悪く言うなら股間を蹴ってやる!!)




そんな思いでギロッと、ニラみ続けていれば、見開いた目を元に戻しながらおじさんは言う。



「・・・・・・たいした素人じゃねぇか。」



小さく、ひとり言のようにつぶやく。




「耳にした噂と、直接見た奴の証言通り、完全に素人だな。」

「何の話です?」

「お前がヤンキーらしくないって言ってんだよ、凛道蓮。そうだろう、瑞希?」




そう言って口元だけで笑うと、スタスタとこちらへ歩いてくる。




「とんでもねぇ素人を巻き込みやがって・・・オメーはやっぱり悪人だぞ、瑞希。」

「・・・俺は自分を善人だと思ってねぇー」

「奇遇だな。俺もだよ。」




無表情で言う瑞希お兄ちゃんに、体をかがめて転がっていたジュースを拾う刑事。




「俺も、自分が正義だ、善人だとは思ってねぇ。」

「え?」




そう断言すると、静かにジュースをお墓の前に置いた。




「どこでその坊主をスカウトしたか知らねぇが、どこまで真実なのか・・・・これからゆっくり、調べさせてもらうぜ。」

「フジバラさん・・・?」




ニヤリと笑うと、私を見た後で墓石を見るおじさん。

座り込んで、目をつぶって手を合わせる。


ウソ・・・!?




(お参りしてくれてる・・・?)




目にうつる現実が、信じられなくて体が固まる。

戸惑ったけど、見間違いじゃない。

今現在、おじさんは祈ってくれている。

二代目総長の伊吹陽翔さんのために、手を合わせてくれていた。