何も言えず、口元をゆがめるおじさんに内心ほっとする。
(ここまで言えば、しつこく絡んでこないでしょう~♪)
我ながら一休さんみたいに、上手なとんちが使えたと心の中で笑う。
それを顔に出しながら、おじさんに言った。
「じゃあ、僕、家の人が待ってるから行きます。おじさん、禁煙頑張ってね~バイバーイ!」
立ち尽くすおじさんに背を向け、階段へと足をかける。
「『火種を渡さない』って?」
ガシッ!
「は?」
今度は肩を掴まれる。
「渡さないってことは、持ってるってことになるよな・・・!?」
そう語る眼は、ギラギラ光ってる。
「ライターじゃない火は、持ってるんだろう・・・・!?」
「うっ!?」
聞いてくる顔はとても怖い。
(なにこの人!?そこまで煙草を吸いたいの!?)
〔★男はしつこく、食い下がった★〕
「ダ、ダメです!煙草は肺炎の原因にもなりま~~」
「いいから出せ!出しやがれ!!」
「わっ!?」
なりふり構わず、私の体を揺らす。
「ちょ、やめてくださいよ、ニコチン中毒!」
「うるせぇ!往生際が悪いんだよ!?」
「それはおじさんの方でしょう!?わっ!?どこに手を入れてるんですか!?」
大事なお花を抱え、お菓子を抱え、両手がふさがってるのを良いことに、おじさんは私の服のポケットに手を入れてきた。
「ほら、動くな!見せろ!」
「ああ!?何するんですか!?」
鬼気迫る顔で叫ぶと、中に入れていた物を取り出した。
「ほら、見つけたぞ!チロルチョコと、バイクのねじと、財布と一緒にある~『こいつ』はなんだ!?」
そう言って、僕の顔に『こいつ』を押し付けるおじさん。
「な、何って~ライターです。」
迷惑な思いで告げれば、にやりと笑う。
「ほーらな!ライターあるじゃねぇか~嘘ついたね~?坊や~?」
得意げに言う顔がイラッときたので、真実を伝えた。


