瑞希お兄ちゃんから一方的に離れた私は、無人の販売店舗に来ていた。
無人店舗っていうのは、人がいないけど、品物はあって、お金はさい銭箱に入れてる形で、売買をするお店のこと。
そのはずなんだけど――――――――――
「あら?お客さん?」
「は、はい・・・!」
なぜか、中年のおばさんがいた。
花を積んだ車から、お店にお花を並べている途中だった。
「まぁまぁ、ご先祖様のお墓参り?」
「え!?いや、その・・・」
少し太めのおばさんは、ニコニコしながら聞いてくる。
「若いのにえらいね?お花買いに来たの?」
「はい・・・・いただけますか?」
優しく聞いてくる相手にホッとしながらうなずく。
すると相手は陽気に言う。
「もちろんだよ!ちょっと待って、すぐに出しちゃうから~」
「・・・あ、あの。手伝いましょうか?」
1人で、お花が詰まったバケツを出し降ろししていた。
大変そうに見えたので言っただけのこと。
「え?悪いよ~家族の人、待ってるでしょう?」
「・・・・いいえ、いいです。みんな、僕ではなく、亡くなった人に用があるわけですから。」
(そうだよ・・・今日の主役は私じゃない。伊吹陽翔だもん・・・)
1人で大変という気持ちもあったけど、このまま早々と帰るのは嫌だと思った。
感情的になって、気まずい空気に瑞希お兄ちゃんを残してきた。
きっと、他のみんなは何があったか聞いているだろう。
(帰りにくいから、時間稼ぎたいし・・・)
「僕は、気を使って席を外す立場ですから。戻るのが遅くなっても気にしませんよ。」
「あら?そうなの?」
「そうです。」
自分で言ってて虚しくなったけど、仕方ない。
そう言うことしちゃった私が悪い。
「じゃあ、降ろすのを手伝ってもらおうか?」
「もちろんです。」
「ありがとね。坊や名前は?」
「ぼ・・・?」
坊や・・・・
(迷うことなく、男の子と判断されるとは・・・私の断層ぶりも、上達したと言うことかな・・・)
「り、凛道蓮と言います。」
「まぁ~綺麗で珍しい名前ね!おばさんのことは、ヒロちゃんでいいよ!」
「え?しかし、目上の方をそう呼ぶのは~」
「あはははは!目上って、アンタいい子ね~ますます気に入った!ほら、運んで、運んで!」
「は、はあ・・・」
背中をバシバシ叩かれ、痛いと思いつつ、車からお花を下ろす。
それで少しだけ、嫌な気持ちが晴れた。


