気まずそうな声を出しながら、初めてこちらへと問いかける謎の人物。
〈聞いてほしい話があります。〉
「「「「聞いてほしい話!?」」」」
それまでとは違う声の調子で聞かれ、思わず身構える俺達。
(何を言うつもりだ?また、妙なことじゃねぇだろうな・・・!?)
そう否定はしたかったが、こいつが電話してきてから、驚きの連続。
ろくでもないことだろうと予想しながら、奴の話に耳を傾ける。
自然と無言になるヤンキー達の中で、その声は言った。
〈あのですねー!円城寺大河君は、高千穂カンナさんを守るため、血みどろになりました!しかも、その前に庄倉のクズがタイマンだとだまして集中攻撃していて、重傷です!〉
「「「「えっ!?」」」」」
ムカつく事実発表。
(大河とカンナは―――――――――)
(庄倉クズの罠にはまってたのか!?)
予想していたこととは言え、知らされた現実に俺達を含めた全員が動揺する。
「マジか大河ー!?」
「やっぱり、騙されたのか・・・!」
ギロッと庄倉をにらむ悠斗と俺。
それを知らない電話の主はさらに言う。
〈はい!だから~その場の責任者を出して頂けませんか~?〉
「せ、責任者だと!?」
「出したらどうするつもりだ!?」
俺の問いかけに、息切れした声で電話の主は答える。
〈第三者の立場として~こういう卑怯な果し合いはよくないと思います!だから、延期してください!!と、お願いしたいんですっ!!〉
「「「「「え、延期!?」」」」」
「ほほ~・・・!」
「百鬼さんっ!」
驚く俺達の中で、不敵な笑みを浮かべた大物ヤンキーがこちらへやってきた。
「なかなか・・・面白いこと言うじゃねぇか・・・!?」
「百鬼さん・・・!」
青い顔で百鬼さんを見る庄倉。
しかし、百鬼さんは庄倉など見ていない。
足早に庄倉に近づくと、その携帯に口を近づけながら言った。
「もしもし、話は聞いたぜ、坊や。」
〈え!?責任者の方ですか?〉
「おうよ。オメーの話は分かった。」
そう言う声は厳しかったが、顔は完全ににやけていた。
そんな百鬼さんが語る。
〈終了時間直後にそうやって駄々をこねるところ見れば・・・12時までにつきそうにないんだろう?〉
「なるほど!そういうことか・・・」
「どういう意味だ、秀!?」
「きっと相手は、12時までにこっちまで来れない・・・だから、引き伸ばし交渉をする気なんだ・・・!」
悠斗の問いに小声で答えれば、その顔が引きつる。
俺も、この事態が俺達にとって不利だとわかったので、百鬼さんの問いに対する電話の主の返事を待った。
〈どうでしょう。〉
これに電話口の相手は、【わからない】というニュアンスの声で言葉を濁す。
「しらばっくれんなよ。」
それにさすがの百鬼さんも、相手が誤魔化しているとわかったので、正論でそのぼかしを正しにかかる。
「お前、こっちにきてるって言ってけど・・・バイクや車のエンジン音がしねぇーまさか、徒歩で走ってきてるわけじゃないだろぉ?」
〈あははは。絶対にしませんよ。〉
百鬼さんの言葉を、笑ってごまかしながら奴は言う。
「でも、エンジン音がしないのはお互い様でしょう?あ・・・でも、少し車の音が聞こえるかも。」
「あ!?こっちが見えるのか?」
百鬼さんの声に合わせ、俺も他のヤンキー達も、辺りを見渡す。
目を見開き、耳を澄ますが・・・
(いないよな・・・!?)
(それらしい奴を確認できない・・・!?)
深まる謎。
奴はどこから、俺達を見ていると言うのか?
「駐車場に集まってますよね?ライトの光がまぶしいです。」
その言葉で、全員がどよめき立つ。
必死で、それらしい奴を探すが視界にも聴覚にもヒットしない。
この状態に、多くの者が得体の知れない相手に恐怖する。
それが、百鬼さんにも伝わったのか、煩わしそうな顔で言った。
「はあ?ふかしてんじゃねぇぞ?姿が見えねぇぞ?」
「私からは見えますよ。」
冷静に言う相手に、大きなどよめきが起こる。
(なんだこいつ・・・!?なんで、こんなに余裕があるんだ?)
相手があの百鬼さん相手であっても、ペースを全く崩さない。
今までの言動を思えば、ただのバカとは思えない。
頭の中で、電話の主が只者ではないと、長年の勘が警告している。
異様な空気になる現場をよそに、カンナの携帯を使っている奴は言った。


