彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)



顔もわからない相手からのメッセージ。

その意味は大きかった。





「カ・・・カンナの頼みで、大河をこっちまで運んでるだぁ!?」

「今どこなんだ!!?」





悠斗に続き、俺も大声で叫ぶ。

これに、親切らしい電話の主は答える。





〈えーと、カンナさんから借りた携帯の中の地図を頼りにしてまして~近道をして・・・・あ、見えてきた!〉





俺達の問いにそう言ったかと思ったら、





〈ちょっと待って・・・!?ない・・・?・・・・・・・・まさか。無理よ・・・!〉




突然。

不安そうな声で、マイナスな単語を述べ始める。






「おい、何が無理なんだよ!?」

「どうしたんだ!?答えてくれ!」





嫌そうな声を出す電話の主の【道連れ】になる形で、ネガティブな気分にされた俺達。

気づけば、悠斗と二人で問いかけていた。




大河に何かあったのか?

カンナがどうかなったのか?





((なにがなくて、無理なんだっ!!?))




町中のヤンキーが耳を澄ませる中、カンナの電話を使っている奴は告げる。





〈そうだよね・・・・ここまで来たんだもんね・・・・〉





つむがれたのは、主語がない言葉。

そう告げる口調は強く、考え抜いた末に漏らしたような声。






〈なんとか・・・なるよね?〉





質問に質問で返すという返事。




「なにがだ!??」




わけがわからなくて、はあ!?と思えば、カンナの電話を持った謎の人物は言う。








〈ごめんまちがえた・・・なんとか、するよ・・・!〉







そう告げる語尾にゾッとした。

体中に鳥肌が立った。






(こいつ・・・!?)





電話口の相手の声は、今夜初めて聞いた。


だが、奴の【話し方】には覚えがあった。


特徴があった。








〈何とかするから・・・。〉






俺達ではなく、言っている自分自身へ言い聞かせるよな口調。



それはまさに、【覚悟を決めた者】が口にする時の言い方だった。






(何をする気だよ!?)






散々してきた嫌な予感に、もはや、一言一句、聞き逃せない。

その予感通り、奴は聞き逃せないことを言い始めた。







〈・・・・・・降りるしかないもんね・・・・!〉

「「降りる!?」」






(こいつ、『なにから降りる』って言うんだ!?)





真っ先に浮かんだのは、大河と庄倉とのタイマン。

電話の主が誰かは知らないが、この戦いに水を差そうと言うのなら、相当の馬鹿だろう。





(それとも、そんだけ大河は重傷なのか!?)





連れて来たはいいが、肝心の大河の容体が急変したとでもいうのか?

だから、夢をかけたドリームマッチを『降りる』選択をしないといけないほど、ひどい怪我をしていると言うのか?





(庄倉のすることだ・・・とんでもないえげつない真似をしたのは間違いないが・・・!)





百鬼さんの隣で、呆然としている顔を見て怒りが増す。






(今夜のタイマンにかかわらず、俺のツレがどうかなったらあいつは殺す・・・!!)






拳を固く握りしめ、電話の主の次の言葉を待つ。

そして聞えてきたのは、先ほどよりも明るい声だった。







〈ははは・・・・時間も、4分前になっちゃったし・・・!〉




(4分?)







それで気づく。

タイムリミットまで、4分しかないという現実に。

駐車場にある時計を見れば、塗装のハゲた12の数字に長い針が迫っていた。





〈あ、そうだ。〉





短くなっている時間に気づいた俺達とは対照的に、別のなにかに気づいたような声を出す電話の主。








〈・・・・もしもし、ちょっといいですか?〉







なんだと思った時には、奴の方からこちらへ話しかけていた。