彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)




「マ、マジで電話を切っちゃたのか・・・?」




ありえない対応と、ありえない態度。

この場の全員を代表するように、悠斗が呟いた瞬間、俺達の金縛りが解けた。






「ふざけんじゃねぇぇぇ!!」






いつもの見栄えのいい外面フェイスも忘れて、庄倉が吠える。

そして、ボタンを押してかけなおした。

数回の呼び出しの後、電話はつながった。

その内容は、スピーカー設定のままなので、俺達にもよく聞こえた。




〈お客様の、はぁはぁ・・・おかけになった電話番号は、現在・・・はーはー・・・電波の届かない場所にあるか・・・ほっと!電源が入っていないため、かかりませーん!〉

「どこの世界に、息切れしながら音声ガイダンスを述べる機種があるー!?」





庄倉じゃなくてもそう言うだろう。

そう思うぐらい、電話を受けた相手はふざけていた。

同時に、その声が疲れ切っていたことに俺は引っかかった。





(なにかあったのか・・・?)





大河とカンナの身を案じる中、電話口の相手の『持論』が展開される。




〈ふーふー・・・当社がそうでございます。アイポも新発売されたでしょー?〉

「アイポ関係ねぇだろう!?つーか、嘘がバレバレなんだよ!!何お前!?誰お前!?マジで誰!?」

〈なんで、名前も名乗らない奴に名乗らなきゃいけないんですか?〉

「知ってるだろう!?俺が庄倉愛雄だって!?」

〈今はじめて聞きました。〉

「うっぎぃぃいいい!!」



「遊んでる・・・」

「ああ、完全に庄倉で遊んでやがるな。」



〔★第三者はそう判断した★〕



あの性質の悪い卑怯者が、ここまで顔をゆがめるなど初めて見た。

遊ぶと言うよりも、おちょくっている。

カンナの携帯を持っている者は、完全に庄倉を手玉に取っていた。







「いいから、さっさと名乗れ!!」






どよめく周囲に、自分の醜態を察したのだろう。






「なんとか言えよ、おい!?俺も名前を言ったんだから、お前も言えクソガキ!!」






どすの利いた声で言う庄倉に対し、電話の主はのんびりとした口調で返す。






〈ああーはいはい。えーと、名前ですか?そうですね~しいて言うなら~〉

「言うなら!?」


〈道に迷ったかもしれない一般人です。〉




「「「「「―――――――――だああああ!!?」」」」






その言葉で、目に見えぬなにかを受ける俺達。

間の抜けた声で言う電話の主に、思わずガクッとずっこける俺達。

それはこの場にいたヤンキー全員に起きた同じ現象。



〔★みんなでズッコケている★〕




「なんだそれ!?迷子かよお前ぇぇぇー!?」




同じように、ガクッとズッコケたなった体を直しながら庄倉も聞く。





「なんなんだよそれー!?迷子って、お前何!?」

〈何って言われても、道に迷ったみたいです。・・・多分、この道であってると思うけど・・・どう思う?〉

「俺に聞くな!見えねーし!?」

〈つかえなーい・・・あ!?坂になってる!〉

「なんだとぉぉぉぉぉ!?」


「ていうか、坂って・・・!?」

「おいおい、どこに行こうとしてんだよ・・・!?」




どうなってんだという顔で言う悠斗。

それが聞こえたのか、電話の主は律儀に答えてくれた。





〈はい!カンナさんに頼まれて、円城寺大河君を人間の底辺である庄倉君が待つ大嵐山まで運んでまーす。〉




「え?」





その声が響いた時、時刻は23時54分となっていた。