警察が来ないよう、ここにいる全員は車も単車のエンジンも切っている。
「このイベントのケツ持ちしたい奴だけ、ガス吐かせてろ・・・!!」
悪魔の顔で百鬼さんに言われたら、誰が排気ガスを呑気に垂れ流すだろう。
もっとも、例外はいる。
「皇助~深夜ドラマに、お前の好きなノアちゃん出てるぞ。」
「マジか!?ノアたーん!!」
明るい光の漏れる四つ輪から呼びかける他の初代メンバー。
外車のオープンカーからは、テレビの音と一緒にエンジン音が響いていた。
乗っているお仲間の言葉で、お気に入りのアイドルが出ているというテレビ番組へと向かう百鬼さん。
「なんかなー・・・」
「ああ・・・」
お互い、言いたいことはわかっていた。
それでも俺と悠斗は口を閉ざして、出入り口を見る。
廃墟と化した工場の駐車場。
ここに来ると約束した親友を待った。
絶対にあいつは来る。
頼りになり、喧嘩にもめっぽう強い。
幼馴染として、10年もつるんできた。
カンナのことだって、女である前に戦士だ。
そして、大事な友達だ。
それを甘ったるいことだと言う奴がいるなら、言わせておけばいい。
俺らには俺らのルールがある。
(それを俺達は、今夜証明する・・・!!)
「よぉ、10分切ったな。」
そんな俺達の神経を逆なでするように、またあいつが来た。
「円城寺、バイクで来るんだろう?音が全然ここまで聞こえねぇ~」
「いちいちからんでくるな。失せろ。」
悠斗の代わりに俺が答えた。
「百鬼さんから、12時がくるまでもめるなと言われただろう?」
「さすが、『雲外鏡(うんがいきょう)』は違うね。物知り妖怪。」
俺のあだ名を皮肉る馬鹿をニラむ。
「使い方が間違ってるぞ・・・俺は、誰でも知ってる話しかしてない。」
「なかなか来ないと、心配だよな?」
「もう黙れ。あっちでお仲間とおしゃべりしてろ。」
「俺が電話を、かけてみようか?」
メンチを切りながら言えば、あざ笑う様な顔でそう告げる庄倉。
「対戦相手の俺が書ければ、出ると思うんだけどよ?」
「ああん!?寝てんじゃねぇぞ!俺らが散々かけてもでなかったんだ!?出るわけーーー」
そこまで言った悠斗の言葉が止まる。
その意味が分かった俺も、口を固く閉ざす。
眉間にますますしわが寄る。
「・・・・なにをした・・・・?」
(この男・・・!!)
「お前は、そういう下種い真似を平気でする男だとわかってるが・・・なにをしやがった・・・!?」
庄倉との顔の距離を縮めながら聞く。
脅すように言えば、口元だけで笑う。
俺はこの顔を知っている。
目上にしか見せない顔。
目下や気に入らない者には見せない顔。
見せるとすれば・・・・
(自分の勝利を確信し、完全に相手を排除できると決まった瞬間に見せる笑顔―――――――――!!)
「番号知ってるから、かけてやるよ!」
高らかな声で、携帯を頭上に掲げてボタンを押した。
スピーカー設定になっていた携帯は、呼び出し音を周囲に響かせ始める。
「ざけんな!かかるわけねぇよ!」
そう強がる悠斗から焦りの色が見える。
話を聞きつけた野次馬達が好奇の目を向ける。
(頼む・・・出るな・・・!大河、カンナ、みんな・・・無事でいてくれ・・・!)
そんな俺の願いもむなしく、携帯の通話音は止まった。
〈もしもし?〉
同時に、聞き覚えのない声が耳に届く。
これで、静かにやり取りを見ていた周囲からどよめきが起きる。
このイベントを見届けに来た初代『龍星軍』達も、TVを見るのを辞め、車から降りて、こちらの様子をうかがっている。
目の離せない状況に、全員が庄倉の携帯を見る。
いや・・・見ていない者もいた。
(庄倉・・・・!!)
携帯ではなく、俺は奴の面を睨んでいた。
そんな俺に気づいた庄倉は、これでもないと言うぐらい、惜しげもなく優越感を漂わせながら勝利の笑みを浮かべた。


