無意識のうちにスタートした準備運動。
何のための準備か、考えるまでもない。
本能みたいなのにしたがって、全身を柔軟する。
「凛君?凛君どうしたんですか?無言でラジオ体操を始め・・・あれ?ビミョーに、ラジオ体操とは違うストレッチ?」
うん、そうだね、涼子ちゃん。
これ、格闘技を・・・空手の練習始める前のストレッチだもん。
ラジオ体操じゃないよ。
私を戸惑いながら見る涼子ちゃんと、一部の周囲。
でも、構う気にはなれず、自分のするべきことをしていた。
なによりも、涼子ちゃん以外、それほど真面目に私を見る人はいない。
みんな、教室の中のライブ映像に夢中。
私が柔軟をしている間にも、円城寺君達の口論は白熱した。
「凛をタダの可愛いモデル系だと思うなよ!あいつ、マジで男気があって強いんだ!オメーらなんか、秒殺だぞ!?」
「おもしれえ!だったら、呼んで来てみろ、尻軽女!!」
健気にも、私をかばうカンナさん。
そんないい子に、悪いボスが逆切れする。
「そんなに褒めるなら連れて来いよ、この場に呼べよ!今すぐ、俺がタイマンの相手してやるぜ!?」
「はあ!?馬鹿じゃねぇの?今すぐって呼ぶと・・・」
「出来ねぇーよな!?謎多き4代目様だからな!?真田瑞希達だって、あいつの存在を隠すような真似してっからな!?コソコソ裏でしやがって・・・よっぽど、見られて恥ずかしいんだろうな~!?」
(・・・・恥ずかしい・・・か。)
「ふふふ・・・」
「り、凛君?今度は笑いだして・・・どうしたんです??」
(まさか・・・・私をガチャガチャにあるシークレットキャラみたいに仕立てたことで、瑞希お兄ちゃんが照れ屋さん呼ばわりされるなんて・・・)
私のことはいいのよ。
「『俺』のことは、なんて言われてもいい。」
「え?り、凛君?どうしー・・・・!?」
涼子ちゃんが何か言ったけど、やっぱり耳に入らない。
スっと、音を殺してドアから教室に入る。
気配を消して、私はターゲットに近づく。
「・・・・尾村先輩よ、やけに、凛道連に噛みつくじゃねぇーか?」
「はあ?俺はいたって冷静だぜ?」
私は何て言われてもいい。
でも、大事な人を悪く言われるのは嫌だ。
ううん、嫌だってレベルじゃない。


