「・・・・意地が悪いな。」
凛が出て言った教室で、先に口を開いたのは先生だった。
「『待ってる』って、どっちの意味だ、瑞希?」
俺の目の前に腰を下ろしながら、恩師がたずねる。
「弁当を渡し終わるまでか、あの子がヤンキーに成長するまでか?どっちよ?」
タバコを出しながら言う先生に、その手から煙草を奪いながら言った。
「両方。」
「あ!?こら!」
「凛を見てると・・・そういう気分になるから。」
そう言って、かっぱらった煙草を口に咥える。
バリスタの勉強のため、ずっと吸ってなかった趣向品(しゅこうひん)。
元々、好んで吸う方じゃない。
ヘビースモーカーのツレがいるから、匂いだけで一杯だ。
今までの人生、数えるほどしか吸ってない。
そんな俺の口にある煙草が消えた。
「やめとけ。」
「・・・せんせー・・・」
奪い返した煙草を、箱に戻しながら言った。
「オメーらしくないだろう、瑞希。こっちが似合いだ。」
そう言って差し出したのは、煙草型のチョコレート。
「・・・・ぷっ!せんせー、いつから甘党?」
「馬鹿!俺も禁煙してんだよ!」
「マジで?烈司に見習わせてぇ~」
「無理だろう?ニコチン中毒だろうが?」
「くっくっ・・・かもしれねぇ~・・・」
どちらともなく笑って、銀紙をはがした煙草をくわえる。
「凛、早く帰ってこねぇかなぁ~・・・・」
「たった今、見送ったばっかだろうが?」
「俺にとっては、長いんだよ。」
加えたチョコを歯でかみくだく。
甘くて美味かったので、あとで凛の分ももらおうと決めた。


