彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)



目だけで見上げれば、瑞希お兄ちゃんと視線が重なる。

同時に、にっこりとほほ笑まれた。






「騒々しい奴らだよなー?」

「あう!」






呆れるように笑って、私に問いかける姿。





やられた♪


(この顔も可愛い・・・!)






瑞希お兄ちゃんの言葉に、ドキドキしながらうなずけば、頭を撫でられた。





「凛、バイク大事にしてくれよ?」

「うん!」






もちろんですよ!

瑞希お兄ちゃん(達)からもらったもの。

粗末にしない!

家でお父さんがするみたいに、ちゃんと洗車もして――――――・・・・!?





「あ。」

「どうした、凛?」





そこまで考えて気づく。





「大変です、瑞希お兄ちゃん。」

「あん?どうしたってんだ?」

「俺・・・免許持ってないんですけど・・・!?」





バイクを運転するうえで、重大なこと。





(免許がない!!)


「免許がなきゃ、運転できませんよ!?」



〔★今までの練習はどうなる★〕



「ああ、そういえば、そうだな~」





私の問いに、呑気な声で瑞希お兄ちゃんは言った。





「けど、中型なら免許取れるだろう?高千穂も持ってたぜ?」

「そ、それはそうですけど・・・!」

「凛って、誕生日いつだ?まだ15だっけ?16になったら取りに行けよ。」

「それは・・・・」


(無理だ。)


「免許は・・・・」





取れない。





(だって、凛道蓮って男の子は実在しないんだもん・・・・!!)





仮に、『菅原凛』で免許を取ったとしても、それはそれでまずい。





(万が一、家に連絡されたら・・・)







そこまで考えたら自然と口が動いていた。





「やっぱり、バイクは受け取れません。」

「はああ!?」

「凛たん!?」

「凛ちゃん!?」

「凛助!?」

「凛道?」


「り、凛、どうしたんだ、急に!?」

「ごめんなさい・・・」






至近距離で瑞希お兄ちゃんに問われ、視線をそらしながら言った。





「僕・・・免許取れないです。」

「なんだそれ!?もしかして・・・金がないのか?それなら、カンパして――――」

「そうじゃない!!」




そういう問題じゃない。




「ごめんなさい!!出来ないんです!」

「あ!?り、凛!」





瑞希お兄ちゃんの腕から抜け出すと、みんなに背を向けて言った。