彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)




カンナさんが貸してくれた携帯を頼りに走る。

背負う形で自分と円城寺君の体を縄で縛った。

彼が落ちないように、細心の注意を払って運転する。

目的地は『大嵐山』・・・にある『工場跡地』

そこがゴールだと携帯の中に入っていた。




「ずいぶん、高い場所にあるのね・・・」




2人乗りしながら、周囲を見渡す。

乗り慣れていなかったが、なんとか円城寺君を大嵐山まで運べそうだった。

ただ、場所が山に近い場所だったので、登って行くのが大変。




「このルートが近道だって言うけど・・・」




携帯の地図を見ながら、暗がりの中を進む。

タヌキでも出てくるんじゃないかという獣道を通過する。

バランスを崩しそうになるでこぼこ道だが、なんとか乗り切る。




「土地勘ないから不安・・・間に合うかな・・・!?」




時刻は23時30分となっていた。





「うう・・・・」

「あ?円城寺君?」




後ろで身じろぐ動きがしたので、起きたのかと思って目だけで見る。





「しょう、くら・・・ころす・・・!」


(寝言か・・・)




それにしては、物騒な内容。





(話を聞く限り、相当ひどい奴だもんね・・・)




そんな危険人物の待つところへ、私は彼を連れていこうとしている。

今日は武器を持っていないので、完全な丸腰。

とりあえず、襲ってきた奴らが持っていた鎖帷子(くさりかたびら)を借りた。

あ、鎖帷子(くさりかたびら)っていうのは、ワイヤーでできたシャツみたいのなものね。

防具なんだけど、なんでこんなものを持っていたのか・・・



(それほど今は、大変な事態なのかな・・・?)


嫌な予感は十分あったから、念のため身に着けた。

胸が押しつぶされて苦しいけど、安全を考えれば我慢するしかない。

そうして、外灯のない道を慎重に進んでいたのだが・・・








ちゃららら~♪



時代劇の一節で使われている音楽が響く。




「必殺●事人?」




聞えてきた古風な音にギョッとして運転を止める。

音の発信源を見て固まった。





「カンナさんの携帯?」




表示は『非通知』だった。





「まさか!?彼女に何かあったの!?」





顔を腫らされ、髪を切り刻まれた乙女の姿が目に浮かぶ。

それで私は、運転もそこそこに電話に出た。