彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)



痛いと感じた。

痛いと思った時、眠くなった。

眠たい気持ちと一緒に、疲れを感じた。






(少しだけ寝たい。)





少しだけ、あと少しだけ。

本当は、寝ては駄目だけど、少しだけ休ませて。

・・・あれ?なんで、寝たらだめなんだっけ?

私、今まで、何してたんだろう?







(バイクの練習をして、カンナさんに再会して、戦って、瑞希お兄ちゃんとの二ケツに成功して・・・・)



“俺の部屋に、泊まって行け!”




泊まる。




(――――――――あっ!!?)




そこでハッとする。





(ダメ、私!寝ちゃダメ!!起きなきゃ―――――――――!)









「起きなきゃ!!」

「わっ!?」







そう叫べば、視界に何かが飛び込んで来た。






「凛!」

「・・・瑞希お兄ちゃん・・・・!?」






目の前にいたのは、大好きな人。

同時に理解した。





「ここ・・・瑞希お兄ちゃんの部屋・・・?」

「あ・・・ああ!俺の部屋だよ、凛!」






確認を取ればすれば、ほっとしたような顔をする瑞希お兄ちゃん。

私をのぞき込んでくる姿。






「ごめんな、凛!大丈夫だったか~?」

「・・・え?」





視覚で気づく。

瑞希お兄ちゃんが酔っていないことに。

続いて触覚で気づく。





「あ・・・冷たい?」






横になっている私の頭が、頭部の周りが冷たい。

頭の下がどうなってるのか。

無意識で体を動かそうとすれば、綺麗な手が私の動きを止めた。






「凛、無理して起きるな!」

「瑞希お兄ちゃん。」





私の手を取り、空いている片手で前髪をかき分ける。

額を優しくなでながら、甘い口調で言う。





「そのまま横になってろ。今、氷枕を、変えたばっかりだから、よく冷えるはずだからよ。」

「え?氷枕??なんで?」

「瑞希をかばって、ガラクタを頭に受けたんじゃないのか。」

「え!?その声は・・・烈司さん?」





声のした方を見れば、灰皿に煙草の灰を落としている男前がいた。