本当は。
(外には、私を探すヤンキーやお巡りさんがいるから、闇夜に紛れて行動するのが一番安全。)
危険なのは、家族じゃなくて、国家権力と暴走集団。
(彼らに、着替えてるところを見つかったり、補導されれば、今迄のことがすべてダメになるかもしれないけど――――――)
理性で動くべきだけど、テーマが『恋愛』となるとそうもいかない。
(しかも舞台が、瑞希お兄ちゃんの部屋・・・・!!)
かつて、アルピニスト(登山家)は言った。
山に登る理由は、そこに山があるから登るんだ、と。
ならば、私も同じ!!
(瑞希お兄ちゃんの部屋があるから、泊まるんだ!!)
瑞希お兄ちゃんの部屋に泊まるためならば!
(すべてをかける価値はある!!)
「俺を瑞希お兄ちゃんの部屋に、泊めてください!!」
(堂々と、好きな人の部屋に入るために危険な山を越えるわ!!)
〔★そんな山はない★〕
彼と再会してから、バイクやお店のお手伝いで会いに来る容易になってからかなり経つ。
だけど、まだ部屋に入れてもらったことはない。
(お店の上の階が、瑞希お兄ちゃんのプライベート空間だけど、まだ入ったことがない!)
一階から上に上がっていない。
今夜は、その第一歩を踏み出せるかもしれない!!
(それで危険を背負うことになって、私は後悔しない。だって・・・!)
「りーん♪あははは~マジか~?泊まるかぁー?」
緊張する私に、ふにゃふにゃ笑いながら彼が聞く。
「凛~俺の部屋に、今夜泊まるよなぁ~?」
グリグリと、頬ずりしながら抱き付いてくる相手。
そんな極上の甘いマスクと声で言われたら―――――――言うしかないじゃん!!
「泊まります。」
〔★凛のファイナルアンサーは『泊まる』を選んだ★〕
「ジャージに着替えて、瑞希お兄ちゃんの泊まります。」
「よぉーし!けってーい!ついて来~い!」
表情を引き締めて言えば、甘ったるい声と顔で彼は告げるのだった。


