彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)



天気のいい土曜の午後。




「はあー・・・・」




元ゴルフ場の芝生の上で、憂鬱な顔をする人物。





「最悪だ・・・」





ため息と一緒にそうつぶやくのは、口元をマスクで覆った若者。





「合わせる顔がない。」





凛道蓮こと菅原凛だった。

太陽が真上にある。

日光浴にはもってこいの日。

明るい時間に、ここに来たのは初めてかもしれない。





(練習に来たのはいいけど・・・・)



「練習にはならないなー・・・・。」






誰もいない広い平地をながめながらつぶやく。

夕方から、バイクの練習をする気だった。

睡眠もとれたので、その気でいた。

だけど・・・・






「瑞希!今日使うパンは、『オスカルハウス』のパンで良いのか?買いに行くぞー?」

「ああ、それで頼むわ、烈司!」





瑞希お兄ちゃんのお店、felicita(フェリチータ)をのぞけば、忙しそうに開店の準備をしていた。

忙しそうにする顔には、ばんそこうが貼ってあって・・・






(まだ治ってないんだ・・・私がつけちゃった傷・・・)






バイクの運転で、後ろに瑞希お兄ちゃんを乗せた時、彼に負わせた傷。

瑞希お兄ちゃんは、気にしなくていいと言うけど、私はそうもいかない。







(何度も失敗を繰り返して・・・瑞希お兄ちゃんに合わせる顔がないよ・・・!)






瑞希お兄ちゃんだけじゃなく、他のお兄さん方の顔も見れない。





(仕方ない・・・単車だけ借りて行こう・・・)





使うのは自由にしていいけど、借りる時は一言伝えろと言われている。

そっと、裏口から離れてガレージに行く。

ガレージの中にある、バイクや車の修理道具が置かれている場所に筆記用具とメモ紙がある。

そこからペンを引っ張り出して、壁にかかっているボードに書き込んだ。









ーバイクの練習のために、借りていきます。ー

ー場所は、いつもの元ゴルフ場です。ー

ー凛よりー








「これでよし・・・」






そのまま、気づかれないようにスタンドをはずして、エンジンをかけないで持ち出した。

ある程度、店から離れたところでキーをかける。








バルン!バルバルバルルル!!







爆音を出すマシンにまたがり、前進した。

こうして、瑞希お兄ちゃん達に気づかれることなく、私は公道を爆走したのです。