彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)






深夜、公園の中は、生きている人間の屍(しかばね)で一杯だった。



「カンナ、平気か?」

「あたしは大丈夫!それよりも、大河の方が・・・!!」

「バーローっ・・・これぐれー朝飯前だ。」



私の目の前には、KOされたヤンキーの山と、それを作った2人の男女の姿があった。

あれから・・・逃げようとする羅漢のメンバー達を1人残らず叩きのめした円城寺という男子とカンナという女子。

私も手出しはしたが、それはあくまで応急処置の範囲。

手を出されたら受けるぐらいで、彼らほどじゃない。

ただ、正論を盾に、一対複数で女の子をリンチにした奴らが許せなくて手を出しただけ。

試合だってそう。

負かした相手を必要以上にいたぶるのはよくない。

なによりも、早く彼らに帰ってもらって、この人達から解放されたいという気持ちがあった。




(まだ走れば、間に合うもんね、終電・・・)




携帯で時間を見ていれば、側にいた男子がため息をついた。




「ぶざまだな・・・こんなことで、へばっちまうとは・・・!」

「馬鹿言うな!大河はよくやったぞ!?お前もそう思うだろう!?」

「あ・・・うん。伸びた人間をバット代わりにして人間を叩くという荒業は、初めて見ました・・・」




少女の問いに、素直に従った。

そして提案した。






「あのさ・・・君の怪我も、その人の怪我もひどいよ。病院へ行った方がいい。」

「え!?そ・・・それはそうだけど・・・」




私の言葉に、なぜか彼女は顔を青くする。

困った表情になる。




(・・・何か都合が悪いのかな?)




側に転がっているヤンキーの上着をはぎ取り、それをブラジャーのみの上半身にかけながら聞いた。




「どうぞ。」

「あ、すまねぇ・・・」

「断片的にしか聞いてないけど・・・君達は、『大嵐山』へ行かないといけないの?」

「え!?あんた、そこまで知ってるの!?」

「は?」

「ああ・・・いや、そうね・・・。『このこと』を知らない奴なんていないもんね・・・」

「なんのこと?」



かけた上着を握りしめ、ぶつぶつとつぶやく少女に、もしかして話がかみ合っていないかもしれないと思う。

そう思った時、別の声が上がった。





「部外者が口出しするな。」

「大河!」





ぐったりしていた少年だった。