彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)





「そんなことされちゃ、硬派でやってる連中はもろ不公平なんだぜ~?ケンカ吹っ掛けられても手も足も出せない。ケンカ売るのも、硬派だと女は殴れないから!」

「なに言ってるの!?殴ってるじゃないか!?」

「そうだよ!親切で殴ってやったんだよ!こいつら、ある意味、策士だぜ!男は男同士、女は女同士でってタイマンの形変えやがったからな!だからこそ、俺らは周りに示しをつけるって意味でこの女にヤキを入れた。みんながみんな女だからって手加減するなって思うなよってよ~!」


「・・・・だから、そんな姿にしたの?」




ゆっくりと、静かに聞けば、下品な笑いが耳に届く。





「教えてやっただけだ!考えてみろよ!男同士のタイマンの時に、女がシャシャリ出てこられちゃ、調子狂うだろう!?心理作戦だよ、心理作戦!こいつらのしてることはそう言うことだ!わかったか、ばーか!!」





本当に、こいつらの言うことは正しい。

だけど―――――――




(正論ではあるけど、正論じゃない・・・・!!)




まるであれみたい。そう・・・




(黒人差別のせいで、貧しい黒人家庭だけに援助金を出したというある州の機関に対して、そこに住む白人たちが『人種差別』だと言ってその制度をなくしたって話と同じ。)



学校の世界史で聞いた話を思い出す。

それを聞いた時のような気持になる。





(正論だけど、何かがゆがんでる。)



少なくとも、私に説明している大場という奴はイカレてる。



「やれるもんなら、叩けるもんなら叩いてみろって調子乗ってるからよ~お仕置きしてやったんだ!」




ヘラヘラしながら得気に話してるから。




(そんな理由で・・・そこまでしたわけ?)




男と女の力の差は、どうしても縮まらない。

護身術を習い始めてから、特に強く感じた。

だけど、だからと言って――――――――――




(そんな言い分で、女の子を、『1人をみんな』でリンチにしたの・・・?)





「おわかりか、マスクのお子ちゃま?」

「よーく、わかった。」





自慢げに言う相手に、私は自然と笑みがこぼれる。

楽しい気分からではない。

どうしようもない負の感情が、私に笑顔を与えた。