瑞希お兄ちゃんの動きすべてを目で追う。
「離れてろ。」
「は、はい。」
そう言われ、素直に従う。
少しだけ、彼と距離を取る。
その間に、瑞希お兄ちゃんはバイクにまたがる。
ーーーーブロロロロン!!
「わ。」
エンジンをかけて、私から離れた。
いや、私というよりは・・・
(空き缶から離れた・・・?)
「見てろよ、凛。」
そう言ってほほ笑む顔は、子供。
(か、可愛い!!)
無邪気な少年に見えた。
見惚れている間に、瑞希お兄ちゃんの目が変わる。
ブロン、ブロン!
彼が、ハンドルを握ってアクセルを踏む。
ゆっくりバイクは進み、シートに座っていた腰が、前にずれている気がした。
それに気づいた時。
「あっ!?」
瑞希お兄ちゃんの体が傾く。
バウウーーーーン!!
「曲がった!?」
その角度、およそ90度。
空き缶にあたらないように曲がった。
ただの空き缶が、工事現場の三角コーンに見えた。
バイクごと、斜めになってカーブした。
「すごい!瑞希お兄ちゃん!」
気づけば。
そう言いながら、彼の元に駆け寄っていた。
これに瑞希お兄ちゃんは・・・
「今のが『ブレーキターン』だ。」
「ブレーキターン?」
「後ろブレーキをかける技だよ!」
ニコニコしながら教えてくれた。
楽しそうな顔。
さっきとは違う、明るい表情。
(これだ!)
私が見たいのはこの顔。
悲しい感情じゃない。
彼には、瑞希お兄ちゃんには、いつも笑顔でいてほしい。
「・・・そうなんだ!瑞希お兄ちゃん、すごいね!」
笑っていて。
笑顔でいて。
幸せでいて。
「やっぱり、瑞希お兄ちゃんは最高だよ!僕の中で、ナンバーワン!一番、すごい人だよ!」
そのためなら、そうなるような言葉を言う。
褒め言葉?
お世辞?
どっちでもいい。
本当だから言うんだもん。
「俺も、そんな風になりたい!楽しくやりたい!」
「凛・・・」
大好きな人には、幸せでいてほしい。
そんな私の願い通り、瑞希お兄ちゃんは嬉しそうに笑ってくれた。


