その時のことを思い出しながら語る。
「ケンカ売られてるわけでもなかったので、やんわりと・・・『気になるからやめて』と言いました。」
「それでも、やめなかったのか?」
私の言葉に、瑞希お兄ちゃんがそう言った。
ああ・・・やっぱり、あなたは・・・・!
「やっぱり瑞希お兄ちゃんは、『僕』のことを理解してくれている。」
これだけしか話してないのに、実際に起きたことを言いあてた。
それが嬉しくて、悲しくて、あたたかい。
話すことが楽になった。
「『僕』は、笑われる心当たりがなかった。服装も、髪形も、いつも気をつけて普通にしてた。だけど、いつまでも笑うんです。」
自分のことを僕と言う私。
甘えのような気持ちがあったから、最初から主語を俺ではなく、僕にしたのかもしれない。
「それの繰り返しだったので、僕も段々イライラしてきました。それが相手にも伝わったのか、そんな反応を楽しんでいるのがわかりました。」
「先公には言ったか?」
「先生に言えるほどの問題じゃなかったんです。むしろ、問題にならない程度のことだと判断されます。そういう空気だったので。」
「ふーん・・・どこも似たようなもんだな。」
「笑っているだけで、悪口を言われてませんからね。先生が注意する理由がないんですよ。」
「アホくせぇ!本人が嫌がった時点でいじめだろうが!?先生のくせにわかんないのかねぇー?」
「ふふふ・・・いいですよ。瑞希お兄ちゃんがそう言ってくれるだけでうれしいです。先生だって、人間ですから・・・完璧じゃない。」
「まぁ・・・それで?凛はそいつらをどうしたんだ?」
「どうにもしません。」
険しい顔をする瑞希お兄ちゃんに、私は静かに答えた。


