彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)



確かめるように、気遣うように触れてくる。

それで私の高まっていたテンションも落ち着く。


「筋肉もあんまりねぇし・・・・なぁ、ネグレクトじゃないよな?」


〔☆よいこのための豆知識☆〕
ネグレクト:子供にご飯を与えない虐待のこと。最低の行為です。


「だ、大丈夫です!食事はしてます、おやつも・・・」

「けど、声変わりがまだじゃねぇか?のど仏も・・・ちょっと触るぞ。」

「え?」




のどぼとけ



(触る?)



マズイ





その意味を理解した後の、私の動きは早かった。




「やめてっ!!」

「うわ!?」




瑞希お兄ちゃんからの善意の手を払いのけ、彼が持っていたバンダナを奪った。





「凛!?」

「触るな!!」



バンダナを真っ先に喉にあてて、続けざまに唇を覆う。



「やめて・・・・!」

「・・・凛・・・・?」



呆然として、私を見る瑞希をお兄ちゃん。

その姿を見ながら言った。



「・・・・やめてください。」

「・・・・凛?」

「い・・・言いましたよね?可愛いと言われるのが、コンプレックスだって・・・?」



浅く深く呼吸しながら伝えた。



「僕は・・・男らしくない体がコンプレックスなんです・・・!」

「え?」


それに悪い意味で、瑞希お兄ちゃんの顔がこわばる。


「コンプレックス・・・?」


傷ついたような表情をされ、私まで胸が痛くなる。



(・・・ごめんなさい、ごめんなさい、瑞希お兄ちゃん・・・!)



心の中で何度も謝りながら言った。



「どうしても・・・マスク、取りたくないんです。」




顔を隠して瑞希お兄ちゃんを探してきた。

家族や学校の人にバレては困るから。

女子であることを隠すため。


だから胸だって、さらしで押さえた。

女の子の証を隠した。


そして今、重大なことに気づいた。



「顔は・・・見せたくないんです。本当に嫌なので、マスクを、バンダナを取らないでください・・・!」



鼻を見られても、口を見られても、大丈夫。



でも、喉が大丈夫じゃない。




(女の子の私に『のど仏』はなーーーーーーーい!!)



声変わりが遅いと誤魔化せるけど、目で見て、触って確認できるのど仏。

男子特有の『せきずい』のでっぱり。




(ごめんなさい、瑞希お兄ちゃん・・・!こんな嘘までついて・・・!)




必要な嘘だとは思いつつも、今の瑞希お兄ちゃんの顔を見たら、やっと悪いことしてるって思えた。