彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)





人間、欲を出すのはよくない。

終わりにしていた、本日の瑞希お兄ちゃん探し。

珍しく、ヤンキーから声をかけてもらったということもあって、最後の最後で瑞希お兄ちゃんのことを質問した。

しかし、それが良くなかったらしい。

なぜなら、声をかけた相手は・・・





「ここで死んでもらうぜ、円城寺(えんじょうじ)!」




血だらけの怪我人というだけでなく、凶悪そうな人達に追われている人だったからだ。

気づけば、お揃いの趣味の悪いジャケットを着た男達に囲まれていた。





「あの・・・これどういうこと?」

「・・・ああ。」





殺気立つ周囲をしり目に、円城寺と呼ばれた怪我人に聞く。

これに彼は、先ほどよりも整った呼吸で言った。





「あいつらは・・・『羅漢(らかん)』の庄倉(しょうくら)の兵隊で、今しゃべってるのが雨宮ってんだ。」

「らかん?しょうくら?雨宮?」

「おう。ちっとばかしなー・・・勝ち抜き戦してんだわ。」

「勝ち抜き戦?」




聞き返せば、私が肩を貸している男の子はニヤリと笑う。





「俺が勝てば、てっぺんを受け継ぐことができる・・・!それを『あいつら』は、卑怯な方法で奪い取ろうとしてる弱虫どもよ!」

「ああ!?なめた口きくなよ、死にぞこないが!!」





彼の言葉に、牛皮の時計をした男が怒鳴る。




「テメー『羅漢』と庄倉さんにたてついて、残りの人生楽しめると思ってんのか!?」

「オメーの大将が、人生馬鹿にしすぎなんだよ、雨宮!薬に手ぇ出して遊んでる頭カラっぽが、調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

「おもしれぇ・・・円城寺!けりつけてやる!」




そう言うと、野球部が部活動で使うらしいバットを手にして近づいてきた雨宮という男。




「え!?え?なに?」




事態が読み込めなくて戸惑う私の肩から、円城寺という子が離れた。




「おらぁ!!」



バキッ!!



「ごは!?」


「きゃああああああああああ!?」




見れば、先ほどまで腕の中にいた男の子が、バットごと雨宮という男子を殴り飛ばしていた。




〔★バトルがスタートした★〕