目覚めた時、私はお兄ちゃんが貸してくれたバンダナを握っていた。
それと一緒に、腕に感じた冷たい感触。
腕にはめられていたウサギのブレスレット。
「あ・・・これ、瑞希お兄ちゃんのブレスレット・・・!?」
両親へ連絡する警察官の側で、綺麗な細工の腕輪をずっと見つめていた。
可愛いと言った私に、瑞希お兄ちゃんはウサギのブレスレットを見せてくれた。
瑞希お兄ちゃんを「お姉ちゃんかも?」と思った懐かしい品。
そのまま、持ってろと言われ、腕にはめてもらって身に着けていた。
貸してくれた可愛いブレスレット。
瑞希お兄ちゃんが忘れていったアクセサリー。
(私へ、残していってくれたかもしれないブレスレット・・・)
「瑞希お兄ちゃん・・・」
そんな自分の思い上がりもあって、そっと腕にはめていた。
これを見て、瑞希お兄ちゃんが私だとわかればと願う。
いつもは、腕につけるという無防備はしないが、時々、こんな風に腕に付けてほうけていた。
ハンカチ代わりに借りたバンダナもそうだ。
洗濯したバンダナと一緒に返そうと、肌身離さず持ち続けた思い出の品。
長い月日の中、ブレスレッド同様、痛まないように保護してきた。
磨いて拭いて、手入れをおこたらなかった。
大事にした分だけ、瑞希お兄ちゃんへの思いも強くなった。
(瑞希お兄ちゃん、瑞希お兄ちゃん、瑞希お兄ちゃん。)
もし、神様がいるなら、私が願うのはただ1つ。
(もう一度、瑞希お兄ちゃんに出会って、バイクの後ろに乗せてもらって――――――――)
昔よりも強くなれた私を見てもらって・・・。
「・・・・瑞希お兄ちゃんに・・・。」
この6年間で芽生えた気持ちを。
「大好きだって・・・・・」
(あなたを愛していると、伝えてもいいですか・・・?)
子供の好きではなく、女としての好きを伝えたい。
(瑞希お兄ちゃん、愛してます。)
大事に温めてきた気持ちをあなたに―――――――――!!
「よぉ、煙草の火ぃ貸してくんねぇか?」
「え?」
夢心地で浸っていたら、真横から低い声が響く。
それで私は、現実へと引き戻された。


