しかし、すぐに元の可愛らしい顔へと戻る瑞希。
人の良い、困った笑みを浮かべながら、ポーカーフェイスで聞き返した。
「なんだそりゃぁ・・・?選ぶ気がない、だ?」
後輩からの質問に、無視を決め込む。
だが、そんな瑞希の態度を、彼は許さなかった。
「誤魔化すなよ!!散々通って、頼み込んだ俺らに『任せてもいい』っつったけど、そんなの口先だけだった!!」
「・・・邪推(じゃすい)だろう?考えすぎだ。」
「なわけあるかっ!!俺は、あんたらのことは見誤らねぇ!!」
瑞希の発言を否定るする大河。
ガシャーン!!
拳を作って机を置きく叩けば、カップがひっくり返る。
それに合わせ、落下して壊れるマカロンと転がるボタン。
これに構わず、大河は叫んだ。
「譲るふりして、誰も選ばねぇ!!そういうシナリオだったんだろうが!?『凛道蓮』は、そんなあんたらが用意したイレギュラーだろう!?『凛道蓮』を出すことで、俺じゃなくてあいつに頭渡した!それでつじつまが合う!」
「大河・・・!」
「ふざけんじゃねぇ!!俺を安く見てんじゃねぇぞ・・・!!」
そこまで言うと、作った拳をカウンターに押し付けてうなだれる大河。
それに他の3人も黙り込む。
「・・・・・・・・そこまで知ってて、骨折もんの怪我までしたのかよ?」
悪びれることなく、静かに聞く瑞希。
初代総長の言葉に、大河は問いの答えない。
そんな後輩に、彼はさらなる言葉をかけた。
「騙されたふりして、俺らの茶番に付き合った・・・お前らもそうか?」
瑞希の問いは、大河から他の3人に向けられる。
大河同様、誰も答えない。
しかし、全員が視線をそらした。
それで十分だった。
小さく息を吐くと、瑞希は手を伸ばす。
キッチンの食器棚から、新しいカップを出してカフェインを注ぐ。
出したままだった残りのマカロン菓子を全部大皿に乗せると、うつむいたままの大河の前に置いた。
「俺は買出しに行ってくる。あと、30分ぐらいで烈司が帰ってくる。それまで店番してな。」
「せ、先輩・・・!」
「安心しろ、カンナ。Clothの看板出しとく。店員はさせない。」
手短に言うと、エプロンをはずしながらキッチンから出る。
「床に落ちたもんは、そのままにしとけ。ボタンは持って帰れよ。」
「センパイ!真田センパイ!」
呼び止めるように言うカンナに、瑞希は振り返ることなく店のドアに手をかける。
「ちゃんと、凛道蓮に会わせてやる。その時は、お前らを呼ぶ。」
それだけ言うと、彼は店の外へと姿を消した。
後には、少年少女と湯気の立つカフェインだけが残された。


