彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)





(そもそも、瑞希お兄ちゃんと出会ったのが、デタラメに乗った電車で降りた場所。どの駅で降りたのか覚えていない。)



漠然(ばくぜん)とはしていたが、大体の範囲はわかる。

だから、それらしい場所をチェックしていって、探すという方法を取っているので・・・・




(・・・探す範囲が広いのよね・・・)




とりあえず、目的地を絞り、往復時間を計算して出掛ける。

記憶に合うコンビニを探しながら、知ってそうな者達に話しかける。

しかし、行った先に必ずヤンキーがいるとは限らない。

それっぽい人さえいない時もあった。

両親に気づかれないことが前提なので、探す時間は限られていた。

終電前までの捜索と決めていたので、遠い場所になると探す時間に余裕がない。

そのため、何度も足を運ぶ羽目になったが、やっぱり見つからなかった。

運が良ければ、聞き込みが出来る。

悪ければ、フラフラして終了。

あるいは、絡まれてストリートファイト&補導目当ての警察に終われる。





(それを思えば、声かける人がいて、喧嘩を売られなくてよかったと思わなきゃ・・・)





そう自分に言い聞かせる。

とはいえ、残念なことには変わらない。

今夜3組目のヤンキー集団の返事に、収穫がなかったことにガックリはした。

そしてそんな彼らから離れようとしたら、突然服を引っ張られた。





「ねぇ。」

「え?」




思わず身構えて、目だけで見る。

私の服を引っ張るのは、派手な金髪の少女。




「その服、V系で流行ってる服じゃないの?」




見る限り、聞く限り、表情も声からしても、敵意は向けられていない。




(因縁つけてきてるわけじゃないか・・・)




それに静かに安心しながら金髪少女に答える。

やんわりと微笑みながら告げた。




「どうかな・・・『アニキ』がいらないって言ったのをもらったから。」


もちろん兄なんていない。

私は一人っ子。

そういう理由は、簡単。




自分を守るための嘘。





「え!?お兄さんいるの!?あんたみたいに可愛い!?」

「は?」

「おい、アリア!」

「ナンパするなよ~」




少女の問いに目を丸くすれば、彼女の仲間が笑いながら言う。




「面食いな~アリアちゃんは!」

「そのまま押し倒すんかよー?」

「ば、馬鹿!そうじゃねぇーし!」


「あははは・・・じゃあ、さようなら。」





彼らが笑っているうちに、全力ダッシュで逃げた。

後ろから何か言われたが、無視して遠ざかる。