「やめたことには、変わんねぇだろう?」
「瑞希お兄ちゃん!」
烈司さんやモニカちゃんの話を引き継ぐ形で、瑞希お兄ちゃんは肯定する。
「こいつらの言ってる通りだ。凛の先輩にあたる連中は、『みんないなくなった』んだ。」
「お兄ちゃん・・・」
これで、思った以上に深刻だとわかった。
「どうして、そんなことになったの?」
自然と口から出た言葉。
瑞希お兄ちゃんは、自分の分のカップを置きながら答えてくれた。
「俺らは、族してる時に、名をあげるような喧嘩とかしてな・・・。」
「名をあげる、ですか・・・?」
「ああ。別に意識したわけじゃねぇ。楽しくしようってことは、決めてたけどよ・・・。」
「でも、結果的には名をあげるようなことになったんですよね?」
「うーん・・・・ヤンキーって奴は、目立つのが好きな奴が多いからな。世間じゃあ、俺らのしたことは『伝説』にされちまってるしよ。」
「されちまってるって・・・」
あまり、望んで有名になったわけではなさそうな口調。
それはそれで、やっぱりすごいと思う。
「そのつもりはなくても、『伝説』にはなってるんですよね?」
「そうみてぇーなんだが・・・・おかしいんだよな~・・・『武勇伝』はあるが、『伝説』っていうのはなー・・・・そんなことした覚えはないんだけどよ・・・?」
「・・・・瑞希お兄ちゃん、それを世間では『無自覚』といいます。」
天然なのか、本気で悩む姿に愛しさを覚える。
好きな人の可愛い姿に、少しだけ和んでいれば言われた。
「『あいつら』も・・・その『伝説』を越えようってことで、相当な無茶をやらかしたらしいんだ。」
「『あいつら』って・・・辞めていった2代目さん達のことですか?」
私の問いに、瑞希お兄ちゃんは一瞬黙るが、すぐに答えてくれた。
「そうだ・・・。どういう喧嘩したか知らねぇーけど・・・・やられた分だけやり返すのが、俺らの世界のやり方だ。」
「それのどこが、無茶に・・・?」
「連続開催の集会やポリへの必要以上のあおり、他の族との無意味な抗争に、半グレ集団をあからさまなやり方で排除したあたりかな。」
「族や半グレはともかく、警察にケンカを売ったんですか!?」
「みてぇだよ。最初こそは、連勝だったが・・・結果として、テメーらがしたことが、倍になってテメーらに返ってきたんだヨ・・・」
(そりゃあ、そうでしょう。警察まで仕返ししてくるなら、かなりのものだよ・・・)
「まるで、呪い返しですね・・・。」
「ははは・・・!ジャンルは違うが、お礼参りされたのは事実だ。・・・変なところで、深みにハマったのかもな・・・。」
「深み?」
「ああ。どこでそうなったか・・・あいつら、思い上がっちまったみてぇでよ。」
「えっ!?自信満々になるほど、強くなってたんですか!?」
「『錯覚』だ。」
瑞希お兄ちゃんが言う前に、低い声が告げる。
「思い込みという点では、強くなったと感じたのだろう。実際は、単に『錯覚する』ようになっただけだ。」
「獅子島さん・・・」
最初から変わらない、落ち着いた声と姿勢。
私達を見ることなく、オレンジとレモンの皮が入った・・・何とかアメリカーノというコーヒーを飲みながら言った。


