「条件をつけて譲った。」
「条件?」
「ああ。」
何かを思い出すようにしながら、瑞希お兄ちゃんはしゃべる。
「俺達の作ったチームだから、引退する時はスッパリと足洗うつもりだった。だから、その点も踏(ふ)まえて約束させた。」
「どんな約束をさせてんです?」
「『【龍星軍】は名乗っていいが、俺らはオメーらのケツ持ちはしない。俺らがらみのお礼参りは別だが、2代になるテメーらがやった不始末は、テメーらの責任持ちで片付けろ。』ってな。」
・・・え?
なんかその約束って・・・
「・・・当たり前のことですね?」
自分でしたことは、自分で責任を取る。
ヤンキー世界に限らず、それはどこでも同じこと。
拍子抜けして言ったら、鼻で笑う瑞希お兄ちゃん。
「それができない奴が多いんだよ。ゆとり世代だかなんだか知らねーけど、羅漢もOB連れて来てたろう?」
「え?もしかして・・・僕が叩いちゃった大人の人達?」
「そういうこと。ああやって、先輩風吹かせて、ガキの喧嘩に首突っ込むんだよ。世間では、『相談役』っていうみてぇだけどな。遊び足りねぇのか、でばってくるんだ。」
「困ったものですね。」
「あははは!そうだな~・・・そういうのもメンドクセーから、チーム残すのは嫌だったんだが・・・」
少しだけ言葉を濁してから瑞希お兄ちゃんは言った。
「『あいつ』は、一度そう決めたら止まれねぇー止まんなかった。」
そう語る瑞希お兄ちゃんは、なげいているように見えた。
「だから約束させて、俺らはそれぞれの後継者を指名して引退したんだ。」
そこまで話すと、湯気が立つコップに瑞希お兄ちゃんは口づける。
気まずい気分の中、私はその場の空気を変えるために言った。
「そ、そうだったんですか・・・じゃあ、俺が4代目ですから、先代と先々代がいるんですよね?どんな人達ですか?」
口にしたと同時に、興味がわいた。
瑞希お兄ちゃんが大事にしていたというのは妬ましかったが、その人達みたいにすれば、私のことを好きなってもらえるかもしれない。
好かれるお手本が見たい。
知りたい。
聞いた。
「烈司さん達も、教えてください!瑞希お兄ちゃん達が去った後、『龍星軍』でどんな活躍をしたか、知りたいです!参考までに教えてください。」
だから、質問したことが悪かったとは思わない。
でも、それは地雷だった。
「死んだ。」
「え?」
瑞希お兄ちゃんではない声が紡ぐ言葉。
「烈司さん?」
しゃべったのは煙草の似合う男前のお兄さん。
「お前の先輩は、いねぇよ。」
「いないっ!?」
『死んだ』に続く、『いない』発言。
「そ、れはつまり・・・!?」
さりげなく、しめされた答え。
聞き返せば、タバコを灰皿に押し付けながら烈司さんは言った。


