瑞希お兄ちゃんが暴走族だとわかってから、彼の話題は我が家の『禁句』になった。
両親が探さないのならと・・・私1人で行動を起こせば、『親という立場』を使って邪魔をする。
「・・・だから、内緒で探してんだけどね・・・・」
毎晩、夜になったら自分の部屋を抜け出して【瑞希お兄ちゃん】を探していた。
瑞希お兄ちゃん探しは、いろいろと危険をともなっていた。
最初の頃、小学生の時は、補導されて自宅まで送られたことがあった。
それで両親に叩かれ、怒られ、あきらめたふりをしたけど・・・
(やめなかった。)
そのことを教訓(?)に、やり方を変えた。
まず、塾の帰りにこっそりと下見と見回りをした。
補導する大人達の顔を覚えること。
見つかりそうになったら回避して、捕まりそうになったら逃げた。
捕まっても振り切るようにした。
回数を重ねるごとに、相手も私を覚える。
だから、私だとばれないように、髪形や服装を変えて変装した。
伸ばした髪の毛をくくったり、降ろしたり、アイロンでカールをかけたりして変身した。
そのうち、ショートヘアーだと変装するのが簡単だとわかった。
それ以後、今日までショートを保っている。
瑞希お兄ちゃんのことをたずねる相手は、ほとんどがヤンキー。
声をかけて怒られたり、無視されたり、からかわれたり。
カツアゲされたり、リンチされかけたけど・・・防いだ。
「話しかけただけで、殴るようなことしないでよ?」
「いっ、痛ててててえ!!?」
向けられた拳を、何度ねじったことか。
瑞希お兄ちゃんは言った。
強くなれ、と。
だから私は、『こんな危ない世の中、護身術習わないのはおかしいよー怖いよー』と両親に、ほとんどしないわがままをして格闘技を習わせてもらった。
基礎を学び、習得した技で、なぜだかわからないけど、因縁つけてきたヤンキー達をしばいた。
瑞希お兄ちゃんを探すため、体を鍛えて強さを磨いたのだった。


