吐き捨てるように言うと、私の腕を掴む獅子島さん。
「あっ!?」
「来い。送るぐらいはしてやる。」
「離してください!冗談でしょう・・・!?」
うわずる声で聞けば、照明の下で男の眼鏡が光る。
「俺は冗談は口にしない主義だ。」
「・・・・うそ・・・」
「必要な嘘はつくが、今は違う。これは嘘ではない。」
変わらない口調で、冷淡に吐く言葉。
それで、相手が本気だと知る。
身の毛がよだつ。
(冗談じゃない!)
「や、やだ!!」
(引き離されたくない!)
気づいた私の現実。
今起きていること。
慌てて、獅子島さんから逃れようとするができない。
「は、離して!」
「すべて、話した。」
つまらない洒落を言いながら、私をグイグイと引きずる。
引っ張る手を振りほどこうと、抵抗する。
なにこれ?冗談でしょう?
いやだ!いやだ!!いやだ!!!
(せっかく、お兄ちゃんに会えたのに!)
やっと見つけたのに!
会いたくて、恋しくて、6年も探したのに!
ようやく、会うことができたのに・・・・!
「わがままを言うな。」
暴れる私を、力で抑え込む。
まったく離れることがない掌。
秘書か執事でもしてそうな見た目に反する腕力。
「瑞希を族の世界に引き戻すことはできない。だからといって、お前を使うのもな・・・」
「え?」
「まぁいい・・・お前を使わない方法で、丸く収まる策を俺が考える。だから凛道蓮、お前は帰るんだ。」
「・・・??」
何を言ってるのか、わからない。
どういう意味か、わからない。
ただわかるのは、この人が私と瑞希お兄ちゃんを引き裂こうとしてることだけ。
(引き離さないで!)
お願い、お願い!
彼の側にいさせて!
なんで会うなって言うの?
お母さんとお父さんと同じこと言うの!?
彼と私のこと、何も知らないくせに!!
やめて!!
一歩、一歩、近づく扉。
お店の出入り口。
(追い出される!)
もう終わりなの?
瑞希お兄ちゃんとの時間は終わり?
シンデレラも、こんな気持ちで階段を駆け下りたのー!?
「やめ・・・!!」
「―――――――――――――――やめろっ!!」
私が言い切る前に、罵声が上がる。
それに合わせて、私を掴んでいた獅子島さんの手が払われた。
「凛、大丈夫か!?」
「み・・・・瑞希お兄ちゃんっ!」
助けてくれたのは、大好きな人。
いつの間にか、キッチンから出てきた瑞希お兄ちゃんが私の側にいた。


