彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)




変わらぬ低音の声で、獅子島さんは言う。





「お前と庄倉の勝負だが、あれはタイマンではない。」

「え?」

「伊織?」

「何言いだすんだ~!?」





その発言に、瑞希お兄ちゃんだけでなく百鬼も顔をしかめる。

それで獅子島さんの眼鏡が光った気がした。







「あれは、戦ったじゃない。『怒った』だけだろう。」

「え!?」






核心を突かれるような言葉。

思わずこぼれた私の声に答えるように、獅子島さんは言った。





「お前は、『制御しない』で力を爆発させただけだ。モニカ制作で瑞希が所有していたブレスレットを、一方的に庄倉に壊されたことへの『怒り』をぶつけただけだ。」

「そ・・・れは、」



(八つ当たりで怒ったのがバレてる・・・?)





そうとしか思えない相手からの見解。







「凛道は、瞬発的に庄倉を攻撃しただけだ。実力もあっただろうが、不意打ちに近い。そんな無意識の中でも、お前の体はルールを守っていた。」

「ルール?」



「なぜ、目をつぶさなかった?」

「え?」







ふいに投げつけられた疑問。

答えられなかったら言われた。





「俺なら、最初の一撃は目つぶしで視覚を奪う手段を取る。」

「そっ・・・!?」

「それができなかったのは、お前が格闘技経験者だからだ。『競技のルールを守っている』からだ。」

「あ・・・」

(そこまで、見切ってるの・・・・!?)






その通りだから言い返せない。





「だから、お前はヤンキーにも不良の総長にも向かない。」






獅子島さんはさらに語る。







「凛道、ヤンキーの喧嘩とは・・・お前の知る競技みたいに優しくない。顔面、金的、目つぶし・・・それらは、暗黙ルールでは、基本すべて、禁止だ。しかし、ヤンキーのすべてがそれを守ると思うか?」

「それは・・・」

「勝つためなら、庄倉のように多勢に無勢を使う。場合によっては、ところ構わず襲撃される。仲間や家族、恋人も人質とられて殴り合いやリンチをしたりする。」

「そ、そんな・・・!」



「まぁ、俺らはすべて返り討ちにしたけどな。」







そう言って私の肩を叩いたのは大男。





「百鬼、さん!?」





眼鏡とは正反対の明るい声で言う。




「俺様もなぁ~寝込みや風呂を襲われたぞー!まぁ、リング場所としては面白かったけどなー!?」

「そ・・・そうなんですか?」

「そうそう!伊織は大げさすぎなんだよなー!やる前からグダグダ言ってよ!可能性否定するなっての!わははははは!」




笑ながら言う姿に、なぜか安心感を覚える。




(もしかして、フォローしてくれてるのかな・・・?)



「瑞希が任せるって言うなら、手足の俺様達も応援するべきだろう?つーか、オメー謙虚すぎんだよ!もっとがっつけ凛助!」

「え?いえ、でも・・・」

「そうやって、モニョモニョ言うな!!オメーがそんな弱気だから、伊織が姑みたいになるんだろ~が!?オメーが気合いさえ入れれば、総長でも何でもできるっての!俺様みたいにな!!」



「お前と一緒にするな。」

「うげ!?」





爆笑する百鬼の頭に、見覚えのあるタウンページが落ちる。





「ぐあああ!かどが!角(かど)が当たった!!」

「という具合で、不意打ちされることもある。」

「も、百鬼さんっ!!」



〔★伊織の一撃が炸裂(さくれつ)★〕
〔★分厚い本の角は意外と凶器になるぞ★〕