しっかりと私を見た後で、よく通る低い声で獅子島さんは言った。
「小柄だな。」
「え?」
「うちじゃあ、瑞希が一番小さいが・・・それよりもコンパクトだ。」
「テメー誰がチビだっ?」
「勝手にキレるな、瑞希。基準として例に挙げただけで、侮辱ではない。」
「ほぉーう!じゃあ、どういう意味だよ?」
キッチンで顔をしかめる瑞希お兄ちゃんにそう言うと、淡々とした口調で元副総長は言った。
「凛道蓮を、客観的に見た時の評価だ。これだと、見た目と迫力にこだわるヤンキーの中では、『総長デビュー』が大変だと言ってるんだ。」
「総長デビュー!?」
(総長って・・・!?)
「だ、誰が?」
(誰がデビューするの!?)
私の問いかけに、眉間の間のハーフフレームを指で直しながら獅子島さんは告げる。
「お前のことだ、凛道蓮。」
「はああああああああ!?」
(わ、私!?)
「私のこと!?」
「そうだぜ、凛。」
口をパクパクして聞けば、カウンター越しに瑞希お兄ちゃんが言った。
「オメーは今夜、俺らの『後継者選び』のバトルに勝ったんだ!よくやったなぁ~!?」
「ありがとうございますっ♪ですが・・・好きで勝ち残ったわけじゃないですっ!」
〔★参加もだ★〕
ときめく笑顔で褒める相手に、私は喜びながらも混乱した。
「み、瑞希お兄ちゃん!総長って・・・私のことなの・・・?」
「そう言ってんじゃん?どうしたんだ?」
「待ってくださいよ・・・総長って・・・!?勝ち残りって・・・!?私は、円城寺君をタイマン会場に運んだけだけですよ!?運び屋ですよ!?」
「わはははは!そう言いつつオメーは、タイマンに参加したじゃんか!?やる気満々だったくせによぉ~!?」
「あんたが引っ張り込んだんでしょうーがっ!?百鬼さんっ!!」
床から起き上がりながら言う百鬼に、ツッコミを入れながら叫ぶ。
「困りますっ!いきなり、困りますよ!わ、わたくしはただ、瑞希お兄ちゃんに恩返しをしたくて探しておりましていただけで~!!」
「えっ!?継いでくれねぇーの・・・!?」
私の言葉に、瑞希お兄ちゃんがあからさまにがっかりする。
「凛、総長するのは嫌なんか・・・!?」
「ううっ!!」
瞳を大きく見開き、口元を薄く開ける顔。
戸惑い色が浮き彫りになった可愛い表情。
「・・・・凛、嫌なのか?」
「うううっ・・・!」
ひ、卑怯だ!
(そんな素敵な顔されたら、断れない!!)
〔★瑞希からの無自覚攻撃★〕
〔★凛にだけに、きいている★〕
返事に困る私に、瑞希お兄ちゃんが切実な顔で語る。
「オメーは強いし、男気もあるから・・・任せられると思ったんだけどな・・・」
「み、瑞希お兄ちゃん!」
「そこまで嫌な顔するとは思わなくてよ・・・」
「うっ!?」
(違う!!)
そういうことじゃない!
違うから、そんな顔しないで!
悲しそうにしないで!
私は、あなたにそんな顔させたくない!
「ち、ちがい・・・!」
「やめろ、瑞希。」
愛しいお兄さんへ声をかける直前。
「凛道が嫌がってるのに、気付いただけでもお前はマシだ、瑞希。」
私の弁解の言葉を、別の人が遮った。


