彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)






「・・・・・・・あれから6年。」







過去を回想して私は思う。









「どうして年齢と住所と電話番号とアドレスとチーム名と、みょ・う・じ!を、聞かなかったんだぁぁぁぁぁぁ!!!!?」







夜の公園、大音量で叫べば、その辺りでいちゃついていたらしいカップル達が顔を出す。





「ちくしょう!!」




痛い視線をものともせず、私は今日も後悔していた。






(あの時・・・眠ってしまった私を瑞希お兄ちゃんは、私の家の最寄の駅まで運んでくれた!!駅の近くの交番に、私を残して去って行った!!保護したおまわりさんの話では、パトロールが終わって戻ったら、私が交番の中で寝ていたってことだけど・・・!!)



私が家出した日、両親は捜索願を出していた。

再会した父母は、私を怒りはしたが、心配してくれていた。

家に帰ってから、両親が私に互いの悪口を言い合うことはなかった。

意見のずれでの対立は続いたが、いつもの日常に戻った。

それで、めでたしめでたし、だったはずだけど・・・・






「瑞希お兄ちゃんに会いたい!」

「凛、またその話なの?」

「気持ちはわかるがあきらめろ。どこの誰かもわからないんだぞ?」

「わかるよ!名前は瑞希って言うんだよ!」

「それだけ言われても、探しようがないわ・・・」





呆れる母の言葉通り、瑞希お兄ちゃんは見つからなかった。

わかるのは名前だけ。



【瑞希】という名前。

それ+暴走族。



名字もそうだけどが、チーム名を聞かなかったことが痛手だった。

どこの中学だ、高校だと、探すよりもチーム名がわかった方が早い。

探しやすい。

ただでさえ、出会った場所が適当に乗った電車が行き着いた先だったので、正確に覚えていない。


わからない。


おまけに両親は、相手が『暴走族』と聞いた途端、目の色を変えて探すのを反対した。





「親切にしてもらったことだけ覚えておきなさい!」

「わざわざ探し出すなんて・・・走っている車に体当たりするようなものだぞ!?」


「お母さん、お父さん・・・」



「「ヤンキーなんだから、会うのはやめなさい!!」」




(・・・・差別だ。)




暴走族というまで、何が何でもあってお礼をしたいと言っていたくせに。




両親の言葉によって、世の中の不条理を感じた瞬間。






(偏見だ・・・!)






同時に、そんなんだから世の中から戦争がなくならないんだとわかった。