近くなった距離に、頭がぼーとする。
見惚れる。
視線を外せないまま、見つめる。
見つめ合う。
彼は、瑞希お兄ちゃんは言い聞かせるような口調で言った。
「俺は、いつでも凛を待ってる。ここは、凛の家だと思っていいんだからな?」
(家・・・・)
「わた・・・・ここを、僕の家だと思っていいの?」
「もちろんだ。好きな時に、帰ってくればいいぞ?」
そう言われ、優しくされ、気持ちがブレる。
「ぜっ・・・・絶体だよ!?絶対、だよ、瑞希お兄ちゃん・・・・!?」
「ああ、絶対だ。」
帰らなきゃいけないのに、帰りたくなくなる。
きっと、シンデレラもこんな気分だった。
やっと出会えた王子様とずっと一緒にいたくて、ギリギリまで粘って、だけど・・・・
「約束だよ・・・・また、瑞希お兄ちゃんのところに来るから・・・・!」
「ああ、約束だ。」
私はシンデレラじゃない。
ここは、おとぎの世界じゃない。
リアルな現実で、魔法が存在しない世の中。
「必ず、会いに来ます。」
幸せになろうと思ったら、自分の手で切り開かなきゃダメ。
恋愛も、同じこと。
「待ってるぜ、凛。」
その言葉に合わせて、彼の手が頭から離れる。
瑞希お兄ちゃんの動きに合わせて、彼の香りも離れていく。
「・・・・あ・・・・」
「ん?どうした?」
その余韻を、名残惜しんで声を漏らす。
これに、勘のいい瑞希お兄ちゃんが反応する。
「どうした、凛?」
そう問いかけられ、言葉を失う。
なんでもないと言えばよかったけど、向けられた視線をもう少しだけ独り占めしたかった。
(こんなに好きなのに。)
愛してるのに。
恋してるって伝えられない状況に、自分を恨む。
(バラしてしまいたい。)
「凛?」
(――――――――言えない。)
今までのことを思い返せば、のどまで出かかった言葉が消えた。
(嫌われるかもしれない。)
嫌われたくない。
それに、男の子だからここまでかまってもらえるのかもしれない。
女の子だってわかっても、まだ好きだと言ってくれる?


