「瑞希お兄ちゃん。」
「ああ、ちょっと待てよ、凛。今、鍵を探して~」
私を背負ったままポケットに手を入れてる大好きな人を、背後からギュッと抱きしめた。
「わっ!?凛!?」
「僕、家に帰る。」
途端に、彼の動きが止まった。
「帰るって・・・・」
「僕、内緒で抜け出してきてるんだ・・・・バレる前に、帰らないと・・・・」
辛くて苦しいセリフだったけど、我慢して伝えた。
そしたら瑞希お兄ちゃんは――――――――――
「うちの子になれよ。」
「え?」
「凛、帰らなくていい。俺と一緒に暮らそう。」
「・・・・・・・・え?」
顔を私の方へと向けながら、真剣なまなざしで告げる。
(一緒に暮らす・・・?瑞希お兄ちゃんと・・・?)
考えた瞬間、胸が張り裂けそうになる。
嬉しいとは違う、不思議な気持ちになる。
「お兄ちゃん・・・それは・・・・」
「・・・・わーてる。」
返事に困る私に、彼は顔を元へと戻す。
「そんなことすりゃあ、未成年誘拐だもんな。」
私に後ろ頭を向けたまま言うと、静かに地面へと降ろしてくれた。
「あ・・・・ち、違うんだよ?」
そんな態度で、急に怖くなる。
嫌われたような、見捨てられるような感覚。
弁解しようとすれば、ガチャリと言う音がした。
「ここで待ってろ。」
「え?」
開いた戸口から、彼1人が中に入ってしまう。
待てと言われて待たされている間が、とても長く感じられた。
(瑞希お兄ちゃんに・・・・嫌われた・・・・?)
恐怖を感じながら待っていれば、彼は再び現れた。
「お待たせ、凛。」
「瑞希お兄ちゃん!」
怖々見れば、彼は何かを持っていた。
「持っていけ。」
「え?」
差し出されたのは、パンパンのビニール。
「これは・・・・」
「飯だ。飲み物も入ってるから、帰る途中で食え。」
「お兄ちゃんっ!?」
「今日は時間ねぇからそれだけど、今度はちゃんと一緒に飯食おうな?」
そう語る彼は、怒ってなどいない。
少し寂しいような顔をしていたけど、笑顔だった。
優しさがにじみ出ている表情だった。


