「ま、まあ!気づいただけでもよかっただろう!?」
重たい空気を変えるために、明るく言う瑞希お兄ちゃん。
見え見えの優しさが痛かった。
「俺が言い出したことだけど、気にすんなよ!?子供の勘違いなんて可愛いじゃんか?なっ!?」
「は・・・はい・・・」
力なくうなずけば、近くから内緒話が聞こえてきた。
「けど、気づくのに6年かかるって・・・」
「結構、天然か・・・?」
「いや、ある意味馬鹿だろう?」
「おバカキャラも可愛いじゃ~ん?」
「うっ・・・!!」
そう言われ、情けなさで目が熱くなる。
「そこ!うるせぇーぞ!」
それに気づいた瑞希お兄ちゃんが怒鳴る。
ウルウル目になる私の肩を抱きながら、コソコソ話す仲間を叱る瑞希お兄ちゃん。
「凛!とりあえず、これでも飲んで元気出せ!」
「え?これ・・・」
そう言いながら、白くて丸いカップを私に差し出す。
「おしゃべりしたから、少し冷めたかもしんねぇけど・・・。」
それを見て、思わず声が上がった。
「可愛い!!猫の絵が描かれてる!?」
「ラテ・アートだ。」
その言葉通り、愛らしい猫が描かれていた。
「お前をイメージして描いたんだ。」
「え!?瑞希お兄ちゃんが描いたの!?上手だね!」
「お世辞言うなよ。まだまだ、下っ端だから、ここでしか描かない。」
「え?ここで・・・?」
「おう、勤め先じゃ新入りだからさ。」
「瑞希お兄ちゃん・・・絵を描く仕事してるの?画家?」
「絵を描く点では同じかもな。正確には、バリスタだ。」
「バリスタ!?」
意外な職業。
思わず聞き返したら、目があう。
「なんやかんやで、お前とは最初からきちんと紹介してなかったな。」
そう言うと、カウンターにもたれかかりながら言った。
「改めまして。俺は、真田瑞希(さなだみずき)。現在はバリスタ見習いしながら、この店で週2日ぐれーカフェ店をしてる・・・・元・『龍星軍』のメンバーで総長してました~あ、年は20でーす。」
ニコッと笑って、甘い声で、口調で告げられる。
(あう!!)
その目力に、笑顔に、すべてに、胸のときめきが激しくなる。
(やっぱり、瑞希お兄ちゃん素敵!!)
だからだろうか。
暴走族だ、ヤンキーだと言われても、その時もあまり実感はなかった。


