私の頭を撫でていた手をひっこめながら、瑞希お兄ちゃんは言う。
「電子カード使って、適当に電車乗り継いで、家出して来たって言ってたよな?」
「そうですが?」
遠ざかる手に名残惜しさと、未練を込めて見ていれば、私が不安がってると思ったのかもしれない。
「いや、お前も子供だったから・・・ガキの時は、うっかりをしちまうことあるから、そんな気にしなくていいんだぞ?」
気遣うように、苦笑いしながら言われた。
(うっかりって・・・なにしたかな?)
心当たりがない。
でも・・・・
「私が素直に、家に帰らなかったことですか・・・?帰らないって、駄々をこねたことでしょうか?」
「いや、そんなどうでもいいことじゃない。」
(どうでもいい・・・)
瑞希お兄ちゃんからすれば、家に帰らないことは悪いことじゃないらしい。
(そういえば・・・ずいぶん私を擁護する発言してくれたな・・・)
当時受けた優しさを思い出す。
胸がきゅんとする。
それで余計に知りたくなった。
「私は大丈夫です。気にしませんから、教えてください。」
「・・・・そんじゃあ、言うけどよぉ・・・・」
言葉を濁しながら瑞希お兄ちゃんは言った。
「お前ね、遠くまで、『家出できてなかった』んだよ。」
「え!?どういうことですか?」
意味がわからなくて問えば、気まずそうに瑞希お兄ちゃんは言った。
「俺さ凛に、凛の家から一番近い駅がどこかって聞いただろう?」
「ええ・・・聞いてくださいましたが・・・それがなにか?」
「おう。お前の話し聞いて、とんでもなく遠い場所から来たのかと思ってたんだけどよ・・・」
「思っていたけど?」
「思いっきり隣の駅だったんだよなー。つーか、もろ凛の近所だった。」
「ええ!?」
「「「「隣!?」」」」
(と、隣って!?)
私の家の周辺だったってこと!?
それに私だけでなく、他のお兄さん達も声をあげる。
「どういうことだ、瑞希??」
「意味わかんねぇぞ??」
「家出先が、隣町までだったと言うのか??」
「だからなー・・・・電車には長い時間乗ったみたいだけど、降りた場所は自宅の最寄り駅の隣だったわけ!乗り場が違っても、着く場所が同じで、降りる場所が違うって駅は、ざらにあるだろう?」
「ええ!?それじゃあ・・・・!?」
もしかして・・・!?と思う。


