「・・・怒られるだろうな・・・」
「心配だから、怒るんだろうぜ。まぁ・・・話聞く限り、凛は悪くない。」
「本当?」
罪悪感と後ろめたい気持ちもあったので聞いた。
それにヤンキーのお兄ちゃんは、穏やかな声で言った。
「俺はそう思う。親に迷惑かけちゃいけねぇーが、だからって子供に迷惑かけていいなんて理屈はない。家を飛び出したくもなる。」
「・・・・帰った方が良いかな?」
「大丈夫。凛がいなくなって、やっとお父さんとお母さんも気づいたはずだ。親であるテメーらが悪かったってな?」
「・・・・そうかな?」
「そうだ。俺が保障する。」
「・・・・瑞希お兄ちゃん、強いね。」
「そうでもない。けっこー弱い。」
「ケンカ苦手なの?」
「あははは!まさか!?めっちゃ強ぇぞ!?」
「お姉ちゃんみたいなのに?」
「お前、次俺をお姉ちゃんと呼んだら、池に捨てるからな!?」
「きゃははは!」
「笑うな!!」
そんなやり取りをして、どこまでも続いている道を2人で帰った。
いろんなことを話して、言葉遊びのゲームをして。
そのうち私は、段々と睡魔に負けてしまって・・・
「瑞希お兄ちゃん・・・・」
「んーどうした?」
「また、遊んでくれる?」
目を閉じたまま聞けば、初めての沈黙が流れる。
今まで私の言葉に即答してくれていたお兄ちゃんが、すぐに返事をしてくれなかった。
「お兄ちゃん・・・!瑞希お兄ちゃん・・・・」
不安になり、薄目を開けてその首にすり寄る。
それに答えるように、私の体を揺さぶって、背負い直してから言った。
「そうだな・・・。凛が今よりも、大きく、強くなったら、いいかな・・・」
「背が伸びたら?」
「それもだな・・・。」
「力が強くなったら?」
「それもだな・・・。」
「バイク乗れたらいいの?」
「そういうのもあるけど・・・・」
一呼吸おいてから、瑞希お兄ちゃんは告げる。
「心も強くなったらな。」
その言い方が、すごく良かった。
思わず、お兄ちゃんの耳元で笑う。
それに相手も、小さく笑った。
「瑞希お兄ちゃん・・・凛は瑞希お兄ちゃんが大好きだよ・・・・」
「うん・・・・俺も、凛が大好きだよ。」
それが私の覚えている、瑞希お兄ちゃんと最後にかわしたやり取りだった。


