彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)




5台のバイクのうち、真ん中を走っているバイクだけが、二人乗りをしていた。

その1台を守るように、四方を4台のバイクが囲んでいる。

2人乗りも含め、運転しているのは、全員黒の特攻服をまとった男達。

みんな、黒のマスクやバンダナ、スカーフで口元を隠している。

中には、サングラスで目元まで隠している者もいた。

2人乗りをしているバイクも、黒の特服姿の若者が運転した。

ただ1人、その後ろに乗っている人物だけ、違う色の特服を着ていた。



「あれは・・・・・!?」



一番小柄で小さい姿。

ウルフヘアーで鼻のあたりまで、シルキロールで隠された顔。

年も一番若いとわかったが、わかったのはそれだけじゃない。




「凛道君!!」




タカオの言葉で、トモキも気づく。




「え!?ああ、マジだ!?お前ら!ケツに座ってるのが、凛道さんだぞ!!」



「ええ!?」

「あの白いのが凛道蓮!?」

「4代目総長!?」




叫ぶタカ&トモに、周囲も視線を元に戻す。

黒の中でも目立つ白い特攻服。

本人だと裏付けるように、白色に刻まれている文字。





「りゅ・・・・!?」

「龍星軍の旗だっ!」





服の文字を読み取る者とは別の者が叫ぶ。

白い特攻服の人物の後ろ。

その後部座席に持っている男の手で揺れる大きな旗。

そちらの方が先に目についていた。




「あの旗、龍星軍のじゃんか!?」

「間違いなく、龍星軍だぁ!」




それらに刻まれた文字は、ギャラリーのテンションを上げるには十分だった。

その反応に、タカ&トモも、ホッとしながら言った。




「ほら、言ったとおりだろう!?あれ!後ろで旗を持ってる白い特服の方が、龍星軍4代目総長だ!」

「え!?マジ!?」

「俺らは本人から聞いたんだぜ!なぁ、トモ!?」

「ああ!いつの間にか、人数増やしてたけど、正真正銘の凛道蓮君だ!」

「おお!?あの白い特服の人が、4代目総長!?」

「うっそー!?リアル凛道蓮君!?」

「写メろう、写メろう!」

「こっち見て~!」




バウンウウン!

ヴォーンヴォ―ン!!

バルバルババババ!

フォンフォン!




見物人が口々に言った時、龍星軍一同はコールを鳴らしながら彼らの目の前を通過していった。

何人かは、ギャラリーを見て手を振ったり笑ったりしたが、肝心の総長様は正面を向いたままだった。

それは総長を乗せて走っている黒服も同じだった。