彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)





「おい、さっさと出せ!逃げられんだろう!?」

「は、はい!」



俺の言葉で、運転席の警官がアクセルを踏む。



ファンファンファンファン!



荒川ほどではないが、急発進をして進むパトカー。

壊された俺達のパトカーの周りに数人を残し、合流したパトカー数台と道を進む。



「・・・・フジバラさん。」

「あんだと?」



前の席に座っていた小僧が振り返る。

神妙な顔で俺に何か差し出した。



「これで・・・顔を拭いてください。」

「あ!?紙おしぼり?お前、お坊ちゃまなのに、持ってるのか?」

「お坊ちゃまでも持ってますよ!す、すみませんでした・・・」

「・・・・そーかよ。」



荒川に叱られ、謝るあたり、まだマシなエリート生だと言える。



「荒川先輩も、どうぞ!」

「ああ、すまんな。モロ、バルサンを鐚からなー・・・ねぇ、バラさん?」



戦闘態勢のまま、軽口を叩く荒川。

俺を見た後で顔を拭く。

そのれに、気が気じゃない様子で岩倉が絡んできた。




「あの!なにが起きたんですか!?バルサンって、ダニを駆除するための物でしょう?少年を補導中に、パトカーの中で使ったんですか・・・??」

「なわけあるか、お坊ちゃん。」




ビニールを引き裂き、中身を顔に押し付けながら愚痴る。



「四代目総長を守るために、SPに変身した初代メンバーが攻撃してきたんだよ!」

「はあ!?攻撃って・・・一般人が警察を!?詳しく、話してください!」

「だとよ、荒川。」

「ああ・・・情けない話だが、実は・・・・」



話す気のない俺の意志を受け、荒川が事の経緯を説明する。

その間も俺は、正面を見ていた。

視線の先は真っ暗悩み。

ライトで道は照らされているが、まだ見えない。