「なんであたしここに…」
恐る恐る彼に聞く。
「お前がぁ、ぶっ倒れたんだよ」
ああ馬鹿だあたし。と、もう1人の自分の声が聞こえた。
「送る」
と、タバコを灰皿に押しつけた。
昔のおばあちゃんちのような木の扉の玄関を出ると、錆びた階段が左側に続いている。
薄暗い、まだ朝だか夜だか分からない中だった。
「お前なんであんな時間にあそこにいたの」
階段を下りながら私に聞く。
なんだか低い声だった。
「スナックで働いてるから」
「お前いくつ」
「15。来月16になる。」
彼はそれ以上は聞かなかった。
階段の手すりに昨日の雨の水滴がしたたり落ちていた。