「おい大丈夫か」
細い声が響いた。

明るい光が見える。
誰かが私に話しかけている。
洗剤の匂いが鼻にかかる。
「ん…」
目を開けると、ワックスのかかった茶髪の髪の毛が最初に見えた。
「早く起きろ、送るから」
「ん…って、ここはどこ!?」
あたしの記憶はあのベンチでこの人と話しているところで終わっている。
「まさか……なんかした?」
「ぶっ」
硬い布団に横になるあたしを眺めながら彼はバカみたいに笑った。
「そんな小さい乳抱いても面白くない。」
と、細めの目をもっと細くして笑っい、トイレに入った。
小さい子供のような笑い顔だった。
起き上がると、隣にはガラステーブルがおかれ、下は畳。
洗濯物が吊るされ、壁紙は古いせいか茶色。
カーテンは綺麗な白。うちと同じようなボロ屋だった。
ガラステーブルの上にはすでに食べてあるカップラーメンと、使用済み灰皿、ライター、タバコ。
「ん」
さっきと違うジャージに着替えた彼はガラステーブルの上にプッチンプリンを置いた。
「5分で食ってね」
そういうとタバコをくわえた。
「すみません、今何時ですか」
「4時10分」
「朝の?」
「そー」
目も合わせずにタバコを吸い続ける。
息の、煙を吐く声が部屋にこだましていた。

プッチンプリンは食べれなかった。
あたしもプリンを食べるなんて久々だったが、
お菓子よりうちの夕飯に困っていたから。
この人も生活に苦しいのだろうか。
トイレに行くふりをして小さい冷蔵庫にプリンを閉まった。