バックネット裏で、うなだれた監督は盛大にため息をこぼした。 「桜庭のことで、お前には苦労かけるな」 「いえ、キャッチャーですから。…当然です」 監督を安心させるためではなく、自分自身をごまかすため。幾度となく「キャッチャーだから」という言い訳を使った。でもこの自己暗示は全然効かないどころか苦しくなる一方だった。 「桜庭にも、言い聞かせたんだ。少しは望月のことも考えてやれと。