「っ、これは、ルール違反だろ」


怒りを含んだ声がして、誰かが私の肩を引き寄せた。
ーー誰って。フィル君に決まってるじゃないか。


「打ち消せ、氷の壁」
フィル君は飛んできた火の玉を、自分の魔法で弾いた。

「おおお、カッコイイ!!!ヒーロー参上だよ、フィル君!いま君の好感度が私の中で限界突破!カモン、ラブイベント!!」

私は拍手喝采。スタンディングオベーション。

「ちょっとお前黙ってて」

フィル君はあきれ顔で呟いて、お嬢様達に向き直って。


「魔導の徒の分際で、力を持たないものに魔法を撃つなんてなんのつもりだ!恥を知れ」

イケメンの大迫力に、女の子達は泣き出しながら、走り去ってしまった。

「おい大丈夫か、リコ」

「か、か、可哀想〜フィル君もうちょっと優しくさあ」

「っ、お前!自分がされたことわかってるのか!」

「えーでもあんなのちょろいっしょ?フィル君が来てくれるって思ってたもん」

「……っ!」

首を傾げる私に、なぜか真っ赤な顔で絶句するフィル君。