ランチも終えて、ちょっと暇になった店内。

さっきから私と同じくらいのお年頃の女の子のグループが、ちらちらとフィル君を見ている。

「カッコイイ〜」
「声かけちゃいなよう」

異世界でもあのノリは変わらんのね。

しかしフィル君もアルティス師匠も超イケメンだから、あれが普通で、この世界は美形だらけかと思ったのだけど。
どうやらやっぱりこの世界でもフィル君たちはカッコいいらしい。
てことはそんなの二人も同棲してて、こりゃ逆ハーといわずして何と言う。

「同居な、お前ただの居候な」

フィル君がすれ違い様にツッコミを入れた。
声に出してないのにすげえ。さすが魔導士。

「魔法使わなくたってわかるわ、お前の煩悩まみれの考えなんて」

「なあんだ。私と通じ合ってるってことね」

ふふんと小娘達に聴こえるように言ってやれば、すっげ睨まれた。こわー。



「あなたフィル君の何なの。纏わり付いて生意気なのよ」

バイト5日目にして、帰ろうとした私は裏口でフィル君ファンクラブに取り囲まれました。ハイ。
小娘共は近所の魔法学校に通う生徒さんだったらしく、魔法を使った嫌がらせで今日は散々な目に逢った。

オレンジジュースからカエルが飛び出し、エプロンの肩ひもが2回切れ、コーヒーのオーダーを抹茶フロートと間違えて。
あ、これは単なる私のミスだった。
地味すぎる嫌がらせだけどーー数撃ちゃ当たる。

「ムカつくのよ、あなた!」

ひとりが私に向かって、野球ボール大の火球魔法を放ってきた。
うわああ、赤い服のおじさんのゲームみたいだ、シャレになんねー!