「ところでリコ、今日はアルバイトを探しに行くんだって?」

パンをちぎりながらお師匠様が聞いてくる。

「んーまあ、自分の食いぶちくらい自分で稼がないとね?」

私は曖昧に笑って答えた。

美形と剣と魔法と精霊と魔物で出来たこの異世界に来て、そのままアルティスのお家に居候して。
帰れるかなんて聞いたことは無いし、言われたことも無い。
戻りたくないのか、いつまで居るつもりなのかなんて、アルティスは聞かない。
ただ微笑んでるだけ。……たまにベタベタ抱きつかれることはあるけど。

「お前に仕事なんて出来るのかよ。朝もまともに起きられないくせに」

フィル君はたまに何か言いたげに私を見るけど、お師匠様の躾が良いのか踏み込んではこない。
でも悪態つきながら、さりげなく私に牛乳のおかわりをくれた。ツンデレってまだ絶滅してない!

「外でなんか働かずにフィル君のもとに永久就職しろって?どうしよう、パパ!私プロポーズされた」

「っ!何を阿呆なこと言ってるんだ、お前は!」

「まだうちの娘は君にはやらないよ、おとといおいで」

ノリの良いアルティスにさらりと攻撃されて、フィル君は真っ赤な顔でぱくぱくと口を開けたり閉めたり。

「よおっし、異世界バイト探しにーれっつごー!!」
「なんで俺まで!!」