「ーーでもまあ、莉子が笑ってるから、許してやるか」

 リヒトはそう言って、泣きそうに笑った。
 お師匠様は虚を突かれたように目を見開いて、彼を見て。一瞬だけ痛そうに顔を歪めてーーいつも通りにニヤリと笑った。

「……ではお兄様のお許しも出た事ですし、正式におつきあいを認められたと言う事で良かったですね、フィル君」
「は!?今そういう話じゃなかったですよね!」

 慌てる俺に、リヒトがぽかんと顔を上げる。

「は?そこまで認めてないけど。フィル君、莉子とつきあってんの?おにーちゃんはゆるしませんよ」
「ちがっ……だれがあんな変態女!」
「は?うちの妹のどこが不満なの。いや待て、どこか探せば良いところが……あったようななかったような」
「反対なのか勧めてるのかどっちだ!!しかも変態を否定しない!」
「じゃあリヒト、妹さんは私にください」
「失せろ変態魔導士。可愛いは正義だが、ロリコンは犯罪だ」
「私は正義にはほど遠いので、問題ありませんよ」
「お師匠様、その発言には問題しかありません!!!」


 ぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた男達に、私はひょいと顔を出して。その光景に思いっきり呆れ顔をしてやった。
 いつの間にかクッションで枕投げ大会みたいになってる。修学旅行の男子高校生か。……でも楽しそうだなあ。

「まったく、男の人っていつまでたっても子供〜」

 しょうがないから参戦しといた。クッションの中に木彫りの熊仕込んで。

「ぎゃああ、なんか殺傷能力ハンパないのキターー!!!」


 異世界生活は、今日も順調です!


fin.