弟子の様子にも構わずに、お師匠様はもう一枚金貨を出すと、それをフィル君に差し出した。
彼は不意を突かれた様子で、「え」と呟いて、お師匠様とそれを見比べるけど。


「君にもお年玉。ーー限定ランチでも頼めば」


 フィル君は息を吞んで。真っ赤な顔をして金貨を受け取った。


「お年玉はありがたく頂きますけど。限定ランチは自分の稼いだ金で頼みますから。デザート付きで」


それを聞いたお師匠様は、クスクスと笑みを零して。

「……君は本当に、生意気でイイコだね」

そう言って綺麗に笑った。
フィル君は困ったように、でも笑って頭を下げる。

なんだなんだ、師弟同士しか分からない暗号か。それともただならぬ仲なのか。

「それはそれでオイシイ……!」

「おい、迷惑妄想暴走女。検討はつくが止めろ」

一気に青ざめたフィル君にどつかれた。何故だ。


……そうして、おねだりに成功した私は、このあとセレ様と共に5色のドラゴンを買おうとして、フィル君に全力で止められる羽目になる。……何故だ!!





ep4 fin.