「起きろ、リコ」

見た目は爽やかイケメン系のフィル君が、冷たい目で私を見下ろしていた。

「お前今日こそ朝飯当番!」

フィル君と私の当番制の朝ご飯。
しかし連日の寝坊で私は当番をサボっておりました……。わざとじゃないもん。

「うう、朝早過ぎだよお〜あと5……じゅっぷん」

「おい。大胆な寝坊宣言だな」

フィル君の声が低くなった。やば。

「ーー我、月満ちる地の魔導の徒。出よ氷の花」
「うっきゃああああ!!」

私は悲鳴を上げて飛び起きる。
背中に現れたのは氷の粒。冷たくて一気に目が覚めた。フィル君の魔法だ。

「ひどいよ、フィル君!毎日!」

「いつまでも寝てる方が悪い」

私と一つしか変わらないくせに、まるで35歳二人の子持ちの主婦みたいな百戦錬磨な顔で(イメージ映像でお送りします)私を見下ろした彼は、はんと鼻で笑った。

「もっと優しく起こす方法あるじゃん!」

「どんなだよ。それで起きるならやってるっつーの」

「優しく『朝だよ、まいはにー』って耳元で囁いてキスしたりとかさ!!!」

「なっっっっ!!!」

私のピンクハートな妄想大爆発に、案の定フィル君は絶句して赤面の上、固まってしまった。
あははは。ざまあみろ。