「こんにちはリコ、今日はいい天気だな、結婚しよう」

私とフィル君のバイト先の食堂にて、毎度飽きもせず、にっこり微笑んで花と婚姻届を差し出してくる王子様、セレ様8歳。

「私を落としたいなら、“一日十食限定ランチセットデザート付き食後の紅茶はもちろんおかわり”くらいオーダーしてみせる事ね!万年、紅茶一択のケチ王子様め!」

私はすでに恒例となったやり取りでそれを弾き返した。
いやんまるでかぐや姫になった気分。

「ううむ……やはりそれか」

「情報通なリコちゃんは知っている。セレ様のおこずかい、めっちゃ少ないもんねー限定ランチなんて夢の夢だもんねー」

護衛のお兄さんがひっそり教えてくれたのよ。
セレ様ったらお父さん(王様)のお手伝いしておこずかい貰ってるんだって。
ちなみにお手伝いとは王の執務室のインクとか紙を補充する係。地味。地味に頑張ってる、王子殿下。

「知ってて貢がせてるのか、お前鬼畜だな」

後ろを通るフィル君がボソリと呟いた。
失礼な!花と紅茶代は王子が勝手に出してるんだ。しかも紅茶代は店のもんじゃないか。

と思ったら、王子様不敵に微笑んだ。あれ?

「ふふふ……今日の私はいままでの私とは違うのだ。なぜなら先日、兄上達に“お年玉”なるものを頂いたのだからな!!」

中途半端な異世界文化、キターー!
王子様は手を掲げて、まるで全軍行進!の勢いで命じる。

「限定ランチ、持ってこーい!!!」

「よろこんでー!」

 何はともあれ、お客様はお客様だ。毎度ありがとうございまーす。