「リ、リコ、そろそろ離して」

うわずった声に見れば、ああ、フィル君を捕まえたままだったよ。

「嫌なこった。必殺『恋人のフリをしているうちに恋が芽生えちゃった』攻撃中だから」

私の返事に、フィル君は赤くなったり青くなったりする。

「な、な、何言ってるんだよ!」

慌てた彼ににやりと笑ってみせたら、ますますフィル君は真っ赤になって——

「こらバイト!サボってるんじゃない!」

店長の雷が落ちた。比喩じゃなく、魔法で。
ごもっともですね。すみません。



そのあとなぜかオムライスをオーダーしたお師匠様に、ケチャップでハートを描かされたあげく、魔法使いでもない私に「私の膝の上で『おいしくな〜れ』ってやってね」などという羞恥プレイ魔法を使わされ、この人の偏った異世界情報は何なのだろうとしばらく悩む羽目になる。






ep3 fin.