復活した王子様は紅茶を頼んだ。ケチ臭いな。
ケーキセットくらい行こうよ、王族。

「王子たる私が直々に妃に迎えてやると言っているのに」

ブツブツ言ってるけど、私はテーブルにくっついたゴミを取るのに精一杯。
誰だよ!オーダーに無いガム喰ってたヤツは!

「王子様からのプロポーズなんて、お前が一番狂喜乱舞すると思ってたけど」

フィル君が意外そうに私を見る。えええ。

「だって王子様って国民の税金で生きてるんでしょ?究極のニートじゃん。手に職のない男はちょっと」

「な、なんだそれは!!王は民の為に尽くしているんだぞ!」

「だからそれ王様が、でしょ。あんた何かしてるの?パンが無いならお菓子食べればとか言ってそう」

莉子様の痛烈なパンチに、王子様愕然。あ、図星じゃねこれ。


追い打ちをかけるように、店に入ってきたのは我らが美しいお師匠様。

「リコちゃーん、今日のおすすめケーキセットね」

「ただいま!さすがお師匠様、太っ腹ぁ!」

「追加オーダーしたら可愛らしくご主人様♡って囁いてね」

「了解です、ご主人様ぁん!」

街を歩くだけで美人が寄ってくる金のガチョウなアルティス様は、引き連れてきたお姉様方にもオーダーを促す。いえい、売り上げアップだぜ!



「リコ、セレ様可哀想なことになってるぞ」

フィル君たら、せっかく無視してたのに。律儀な少年だ。

王子様はキラッキラした目を潤ませて、私を見上げる。がしっと両手で私の手を掴んだ。おお、モテ期到来か。

「セインティアの王になる者は、一目惚れした相手と結ばれないと死んでしまうという言い伝えが」

「あっ、だいじょーぶだいじょーぶ。その王子様7人兄弟の末っ子だから。王位継承権は星の彼方。言い伝えまで到達しないよ」

お師匠様がニコニコ暴露した。がっくりする王子様はちょっと可哀想。

「私はリコに一目惚れをしたのだ……どうしたら私の妃になってくれる?」

「10年後に出直してきて」



セレイエール・フォルディアス・セインティア王子。
セインティア王国第七王子、御歳8歳。


異世界だろうと、私は犯罪者にはなりたくない!切実に。