「今日はたまたま私が先に店を出たけど、同じ家に暮らしてるフィル君とは毎日一緒に通勤してるんだから、私が仕事終わったらフィル君もすぐに出てくるのはわかりきってるのに。こんなとこでリンチしたらすぐ見つかるに決まってんじゃんね。あのお嬢様たち、知らなかったのかしら」

ツメが甘いな。うん。

「そっ、そういう意味かよ!」

フィル君がなぜかがっかりして言った。なんだろう、何かそれ以外の意味に聴こえる要素がどこにあったんだ。

「ああ、私達通じ合ってるから、私のピンチには王子様(フィル君)が来てくれる、とか?」

「いい!もういい!とてつもなく恥ずかしいから黙れ!」

フィル君は生まれてきてごめんなさいみたいな顔で私を見た。なんだなんだ。

「さあ帰ろう、フィル君。さっきの活躍に免じて、今日は君の好きなビーフシチューでいいよ!」

「……それ作るの、俺だよな……」


 すっかり日も落ちた街を、私はフィル君と手を繋いで歩く。

「いやあしかし、本当に格好良かったよ、フィル君。思わず惚れそうになった!」

「もうなんでもいい……」


異世界生活も、悪くない!




ep2.fin